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Books ⁑ 恋しくて - Ten Selected Love Stories - Editing and translation

両親の本棚からたまたま拝借した一冊で、村上春樹さんが翻訳・編集をされた短編集『恋しくて — Ten Selected Love Stories — 』。
訳者あとがきによると、この短編集は村上さんが購読している「ニューヨーカー」という雑誌で掲載されたある三遍の小説(本書に書かれている)がきっかけで生まれたとのことです。

恋しくて ( 表紙 )

学生の頃、翻訳はただ訳せばいいものではないと学んだことがあるけど、本当にそうなんだなと体感したような瞬間がいくつもありました。
なんといっても、村上春樹さんが作品ごとに付けた邦題が素晴らしく魅力的で、物語の入り口に立っただけで一気にその世界に惹き込まれます。『愛し合う二人に代わって』という最初のお話し、私はとても好きでした。他のお話を読み終えた後もずっとこのお話が響いてます。
書籍のタイトルでもある『恋しくて』という言葉がストレートに響く作品なんじゃないかな、なんて思いました。

タイトルの【恋しくて】という言葉。
どこか一方通行な切なさというか、あと一歩を踏み出せない気持ちというか、そんなやるせない恋心みたいなものが浮かぶ言葉だなとつくづく思うのです。
英語にしようと思うと、"I miss..." という訳が多いのかな?そしてそう思うと、この "I miss..." の表現もまた深いのだろうなぁ、と新たに言葉への関心を深めるのでした。


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[ 2024年 3月 Mediumより ]


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