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厚生労働省の裁量労働制に関する検討会と裁量労働制対象(適用)拡大について

裁量労働制に関する厚生労働省検討会(第7回)

厚労省の裁量労働制に関する検討会(正式名称「これからの労働時間制度に関する検討会」)の第7回検討会が本日(2021年12月16日)開催。

議題は「これまでの裁量労働制等に係るヒアリング概要について」「年次有給休暇の概要及び現状について」「これまでの議論を踏まえた主な論点について」。

裁量労働制に関する厚労省検討会(第7回)資料

裁量労働制に関する厚生労働省検討会(正式名称「これからの労働時間制度に関する検討会」)第7回検討会の資料が本日(2021年12月15日)公開された。

これからの労働時間制度に関する検討会(第7回)資料
資料1-1 企業からのヒアリング概要について(PDF)
資料1-2 労働組合からのヒアリング概要について(PDF)
資料1-3 労働者からのヒアリング概要について(PDF)
資料2-1 年次有給休暇制度の概要等(PDF)
資料2-2 年次有給休暇の現状について(PDF)
資料3-1 主な論点(案)(PDF)
資料3-2 これまでの構成員の主なご意見(PDF)

資料3-1 主な論点(案)

裁量労働制に関する厚生労働省検討会(正式名称「これからの労働時間制度に関する検討会」)第7回検討会資料3-1は「主な論点(案)」。

主な論点(案)
○それぞれの労働時間制度の意義をどう考えるか
○裁量労働制が、その制度の趣旨を踏まえたものとなるための方策についてどう考えるか
・労働時間、健康・福祉確保措置、処遇・評価
・対象業務、対象労働者、本人同意、同意の撤回
・集団的労使コミュニケーション、導入後の運用 等
○年次有給休暇(時間単位年休を含む)の取得促進の在り方についてどう考えるか
○経済社会の変化、デジタル化による働き方の変化、(略)禍等による労働者の意識変化の中、アフター(略)の働き方を見据えた労働時間制度等についてどう考えるか

資料3-2 これまでの構成員の主なご意見

裁量労働制に関する厚生労働省検討会(正式名称「これからの労働時間制度に関する検討会」)第7回検討会資料3-2は「これまでの構成員の主なご意見」(「構成員」とは検討会委員の有識者)。

これまでの構成員の主なご意見
<総論(制度の意義等)>
○個々の労働者が自らの知識、技術や創造的な能力を活かして具体的な成果に反映させていくことが求められる業務における、自由度の高い働き方に対応した制度の在り方という視点で考えていくことが必要。そのような自由度の高い働き方は、適切な制度の下で行われると、働く側、企業・事業者双方にメリットがあるのではないか。
○裁量労働制のほかに、管理監督者あるいは高度プロフェッショナル制度、フレックスタイム制、事業場外労働に対しても、例えば、テレワークみたいなものを視野に入れると、その他の裁量的な働き方との関わりはそれなりに深いので、そのような制度も視野に入れた上で全体として内容的にも適切で、全体的な整合性の取れた制度を考えるという視点が大事ではないか。
○裁量労働制の位置づけを労働時間制度の全体の中で考えていく必要がある
のではないか。労働法上の位置づけや整理とは別に、企業の立場からすると、裁量労働制は様々な労働時間管理の中の一つのオプションであり、どういう人にこの裁量労働制を使ってほしいのか、フレックスタイム制度よりもさらに自由度の高い働き方であるなど、労使に対して裁量労働制の位置づけを分かりやすく示す必要があるのではないか。
○裁量労働制の趣旨としては、労働者自身の健康状態に合わせることができる、また、家庭の事情などに合わせることができるという意味で、マイペースを大事にする労働者にとっても魅力的な制度ではないか。
○労使ともに裁量労働制の本来の趣旨をちゃんと理解し、きちんと使っているところと、少し逸脱してしまっているところがあるのではないか。本来の裁量労働の働き方とは違う働き方を強いられている人たちに対して、何らかの支援、ある種の歯止めをかけていく必要があるのではないか。
○働き過ぎによる健康被害の防止という点はしっかり確保する、その中で効率性の高い働き方を実現していく、濫用的な使い方に適切な規制をかけるといった点などが重要ではないか。メリットがあること、大きなデメリットを生じさせないようにするというところを意識することが必要ではないか。
○対象になる労働者に関する要件、裁量性の要件が特に重要ではないか。自由度が十分に発揮できなくなる可能性なども視野に入れた上で裁量性の要件
を考えるとともに、健康確保措置の在り方、賃金等についての額や決め方な
ども検討の対象ではないか。
○手続に関しては、集団的な合意の枠組み、個別的な同意の枠組み、記録の作成・保存、関係する様々なものの行政機関への届出、周知などが課題ではないか。
○今後は、(略)前には想定していなかった大きな変化が現在の労働市場に起こっていることを踏まえた上で、どのような法制度の整備が必要になるかを考えていく必要があるのではないか。

<労働時間>
○健康を害するような労働時間にならないように、そういうことが起こらない制度を基本に考えていくことが大切ではないか。
○みなし時間制度、とりわけ、裁量労働制のみなし時間制度の場合は、実労働時間ではなくてみなし労働時間制を取ることによって、自由度の高い働き方を認めようという考え方から導入されたことは念頭に置くべきではないか。

<健康・福祉確保措置>
○労働者の健康確保については、労働者自身も、正しい知識、認識、自律的な行動が必要ではないか。
○健康確保を行っていくことと労働生産性の向上は必ずしも背反しないので
はないか。

<処遇・評価>
○労働意欲、モラルといったものも労働者の健康と関連するということが分かっており、例えば、一生懸命頑張っているが十分な評価が得られないといったことが心身の不調が発生するストレス要因になることが示されている。健康問題に関わることとして、正当な評価がなされるかどうかという視点もあるのではないか。
○本来割増賃金を支払うべき労働時間を経営側が減らしたいというときに、裁量労働制が使われているという実態も一部あるようであり、その点をどう考えるのかも課題の一つではないか。
○裁量労働制の特別手当というものがどういう趣旨の手当なのかという整理
が必要ではないか。
○裁量労働制の労働者の不満の内容が、みなし時間と実働で乖離があり、その分の割増賃金をもらっていないということなのか、そうでないのかということが重要ではないか。
○裁量労働制の理解の仕方がいろいろと違っているようだ。時間外手当の簡便な払い方を可能とする制度だと理解して、実働時間に対する時間外労働は幾らとなるかを逐一チェックすることなくざっくり決めることを許容する制
度と受け取る向きもある。これは実働時間に比例して割増賃金が支払われる
べきことを前提としているが、もともと裁量労働制を導入したときには、時
間比例で賃金を支払うのが合理的でない働き方に対して、時間の縛りを取り
払ったほうが労使双方にとってよい制度となるのではないかという議論で
あった。裁量労働というのはどういう目的の制度なのかということを改めて
確認する必要があるのではないか。

<集団的労使コミュニケーション>
○ 自由度の高い柔軟な働き方の導入過程について、この導入過程をうまく進めないと、そのあとで柔軟な働き方を現場で実践するのは難しいのではないか。裁量労働制に関しても、経営にとっては生産性が向上する、労働者にとってはワーク・ライフ・バランスが実現するといった双方にとってのメリットは指摘されているが、そもそも裁量労働制を何のために導入するのかというところが、労使の間できちんと合意できていないといけないのではないか。

<導入後の運用>
○ 労働時間管理の重要なところは職場での運用段階ではないか。実際に職場も変わるし、取引先も変わる、仕事の内容も変わっていくという中で、事前の想定とは違った状態になったときにそれをチェックできる、それに気づいて是正していく仕組みが必要ではないか。例えば裁量労働制であれば、当初想定されていた裁量が実現できていない、あるいは想定していた労働時間を超えているなど、そういったことを把握したら放置せず、適用対象から除外する、そして問題を解決したらまた戻すなど、運用段階でのチェックとその改善策が必要ではないか。

資料1-1 企業からのヒアリング概要について(PDF)

資料1-2 労働組合からのヒアリング概要について(PDF)

資料1-3 労働者からのヒアリング概要について(PDF)

資料2-1 年次有給休暇制度の概要等(PDF)

資料2-2 年次有給休暇の現状について(PDF)

資料3-1 主な論点(案)(PDF)

資料3-2 これまでの構成員の主なご意見(PDF)

追記:裁量労働制に関する厚労省検討会(第7回)傍聴報告

『労働基準広報』編集部は、裁量労働制に関する厚生労働省検討会(正式名称「これからの労働時間制度に関する検討会」)第7回検討会の傍聴報告を「事務局からは、裁量労働制などに関する『主な論点(案)』が示された」とツイート(2021年12月16日午後7時11分)。

裁量労働制に関する厚生労働省検討会(正式名称「これからの労働時間制度に関する検討会」)第7回検討会で厚労省が示した「主な論点(案)」は「裁量労働制が、その制度の趣旨を踏まえたものとなるための方策についてどう考えるか」。つまり、ただただ裁量労働制拡大実現を前提とした論点。

なお、写真は『労働基準広報』編集部が撮影した裁量労働制に関する厚生労働省検討会(正式名称「これからの労働時間制度に関する検討会」)第7回検討会の写真。

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追記:裁量労働制ヒアリング(企業・労働組合・労働者)

厚生労働省の裁量労働制に関する検討会(正式名称「これからの労働時間制に関する検討会」)において非公開で行われた企業(2)・労働組合(1)・労働者(1)ヒアリング全4回の議事概要(議事録ではなく議事概要)が今週の火曜日(2021年12月21日)に公開された。

企業からのヒアリング(2021年9月7日)
1 A社(電気機械器具製造業/従業員数 10,000名以上/裁量労働制適用者の割合:全体の約30%強(専門業務型:約9割、企画業務型:約1割))
2 B社(その他金融業/従業員数 約3000名/裁量労働制適用者の割合:全体の約1%(専門業務型:2割、企画業務型:8割))
労働組合からのヒアリング(2021年10月15日)
1 A組合(製造業等の組合が加盟する産別労働組合/組合員数20万名以上)
2 B組合(情報通信業の労働組合/所属企業の従業員10,000名以上(裁量労働制適用者の割合:全体の約2%(専門業務型:約7割、企画業務型:約3割))
企業からのヒアリング(2021年11月11日)
1 C社(電気機械器具製造業/従業員数 約3,000名/裁量労働制適用者の割合:全体の約50%(専門業務型:約3割、企画業務型:約7割))
2 D社(電気機械器具製造業/従業員数 約30,000名/裁量労働制適用者の割合:全体の約17%)
労働者からのヒアリング(2021年11月29日)
1 A氏(所属企業:機械関連製造業(勤続年数:約3年)/専門業務型裁量労働制(適用年数:約2年)/業務内容:研究開発)
2 B氏(所属企業:輸送用機械等製造業(勤続年数:10~15年)/企画業務型裁量労働制(適用年数:約3年))

なお、12月16日に開催された第7回検討会の資料として「企業からのヒアリング概要について」「労働組合からのヒアリング概要について」「労働者からのヒアリング概要について」が公開されている。

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*ここまで読んでくださり感謝。(佐伯博正)