芥川賞受賞作「1R1分34秒」を読んで。
現在発売中の「文藝春秋」にて、今年の芥川賞受賞作である町屋良平さんの「1R1分34秒」を読みました。
最近のnoteで文章を書くことが日課になった私ですが、言葉を操り人の脳内・感情に潜り込んでいくその力に圧倒されました。今回は、少しばかり感想を書いてみようかなーと思います。(ネタバレしないように、ストーリーにはあまり触れません)
一言でいうと、「内省の狂気」という感じ。
戦績の良くない、将来の見えないボクサーが、日々のトレーニングやアルバイトなどの日常、人間関係の中で「本当に自分は勝ちたいと思っているのかどうか」とか、「ボクサーであることに何の意味があるのか」ということに、もがき苦しむ。ものすごく内省する主人公で、内省の一部として木とすらも対話する。人との会話の間合いの中でも、対話をする。街に漂う空気とさえも、対話をする。すべて自分との対話で、内省なのだけれど、その心理描写がとてもとても細かく、どんどん自分の感情のように感じられる。割と早い段階から、自分の脳内や心の中が、主人公と重なりその感情にかき乱されていくのがわかる感じ。焦げ付くような感覚がした。上手くいかない感情も、正直になれない言葉も、承認欲求も、格好つける気持ちも、誰かにそばにいてほしいと思う弱さも、勝ちたいという欲望も、すべてがヒリヒリと。
ウメキチというコーチ(選手でもある)との出会いで変わっていく主人公を感じ取れるのも面白い。言葉が変わり、生活が変わり、トレーニングが変わり、関係性が変わり、最後には主人公の精神が変わっていく。
私は、ウメキチに足をマッサージしてもらいながら泣くシーンが好きだったな。涙が地面に落ちて黒くシミになり、途中からそれをひとつのかたまりにしようとコントロールするところも。あのとき、主人公の、からっからで迷いのある心に魂が蘇った感じがした。
主人公の心の変化を、ヒリヒリとした感覚を持ちながら追っていくと、最後に見える景色が痺れる物語でした。
ウメキチサイドに気持ちを寄せながら読んでみても面白いかもしれないなー。
言葉って、すごいですね。想像力を掻き立て、人の心を揺り動かす力。
青春小説?なのかもしれないけど、青春ってほんとしょっぱいです。笑 とにかく私は読みながら胸がヒリヒリしたよ・・・
皆さんはどう感じながら読みましたか?
オススメの本も、是非教えてください:)
Sae