【長編小説】走馬灯で会う日まで #1
休憩から戻ると店内は相変わらずにぎやかだった。
さも喫茶店らしくコーヒーの匂いが充満していて、吐き気がした。客の話し声がガヤガヤと耳に障る。まるで、小さな虫が耳の周りを周回しているような気分だ。
時計を見る。十時ちょうど。あと六時間は、仕事をしなくてはいけない。それですんなり帰れたらいいが、どうせ残業する羽目になるだろう。今日だけで、あとどれだけの数のコーヒーを入れなくてはいけないのか。どれだけの数の作り笑顔をしなくてはいけないのか。考えるだけで気が遠くなりそうだった。
床に