かさねる同時リバーシ せーのでツミクル デザイナーズノート
かさねる同時リバーシ せーのでツミクル( 以下ツミクル )は、2人専用の同時手番の対戦ゲームです。
・同時手番なので、先手後手の有利不利がない!
・同時手番による、相手との読みあいがアツい!
・重ねておかれたコマを、まとめてひっくり返して大逆転!
・バッティングチップで、盤面が変化する!
といった、通常のリバーシをはじめとするアブストラクトでは得られないエキサイティングなゲームです。
そんなツミクルを僕がどんな気持ちで作ったのかを書き残しておきます。
コンセプトを考える
同時手番のアブストラクト(厳密にいうと、二人零和有限確定完全情報ゲーム)は作れないだろうか。という疑問が最初です。
さまざまなアブストラクトがありますが、先手後手の有利不利の問題が付きまといます。囲碁という歴史の長いゲームですら、つい最近先手のハンデが5目半→6目半に改められるなど、この問題の決着をつけるのは非常に難しいのです。
アブストラクトという、ボードゲームの中では長い歴史を持ち、プロが成立しているような厳密なゲームなのに、先手後手の有利不利が存在していることに疑問を持っていました。
これを同時手番にすることによって解決しようという安直な考えです。
なのでコンセプトはシンプルです
・同時手番である
・アブストラクトである
この 2 つを両立したゲームを作るだけです。
今回は、ターゲットが存在していません。ゲームシステム先行で、この先どのようなゲームになるかあまり想像できておらず、実験的な側面が強いからです。
さて、どんなゲームになるのでしょうか。
ゲームシステムを考える
日本でもっとも有名なアブストラクト、それは将棋でしょう。まずはそこから考えてみることにしました。
カードサイズのホワイトボードに、「7六歩」みたいな感じに書いて一緒に見せたらいいんじゃね?って思いました。それを将棋が好きな友達に言ってみたところ、「ちょっとずつ相手を詰めていく動きができなくなるから駄目じゃね?」って言われました。確かに、同時に動くことでするりと抜けるので、詰みの概念がなくなります。
たしかに、同時手番であれば、相手の王の動きを読んでそこに合わせないと王が取れません。そもそも、他の時に同じ場所に打った時どうなるのか?交換か?などの疑問もあり、一度考えるのをやめました。
他にどんなゲームがあるでしょうか。ぱっと浮かぶのは、囲碁、チェス、リバーシですね。囲碁はルールは知っていますが、コウの問題を解決するのが大変そうです(しっかり考えたらいけるかもしれません)。チェスは将棋と同じ問題を抱えています。では、リバーシはどうでしょう。
リバーシは、コマを置いたときに白が黒に黒が白に代わります。同じ場所に置かなければ、効果がバッティングすることはありません。すべての盤面を埋めれば必ずゲームが終わります。同じ場所に置いてしまったときの処理さえ考えれば行けるのではないか?
ということで、リバーシをベースに試しに作ってみることにしました。
まず考えなければいけないのは、自分と相手が同じ場所にコマを置いたときの処理です。最初に思いついたのは、その手をなかったことしてやり直す形です。が、また同じ場所に置いてしまうかもしれません。
なので、次の手では同じ場所に置いたところには置けないようにしようと考えました。とはいえ、そのあとに、またさっきの場所に置きたくなるだろうとも思いました。だんだん状況が変わってくるだろうとも思いますが、それを繰り返すのも不毛だなと思いました。
もう一つ考えたのは、その場所に目印を置いて今後そこには置けなくするパターンです。その目印の処理がやや複雑になってしまいますが、先ほどの不毛感はなくなります。コンポーネントも増えるので、同人ゲームとして出す意義もちょっとは生まれるなというヨコシマな考えもありつつ、目印を置く方向で進めることにしました。この、目印をバッティングコマと呼ぶことにします。では、このバッティングチップをはさんだ時どうするか?などを考えてまとめていきました。
実際に作ってプレイしてみました。なかなか不思議な感覚ですが、体験としてはよさそうでした。そこにいた一人が「重ねたらおもしろいんじゃないの?」というので、自分の色の上に重ねられるルールを入れて遊んでみました。それはそれで面白いなとおもいつつ、「重ねる」と「同時手番」を一緒にする必要もないのでは?と思ったので、「重ねる」だけで交互に遊んでみましたが。しかし、重ねたコマを大量にひっくりかえせるので、後手がかなり有利になり、あまりよくありませんでした。むむ?逆に考えると、「重ねる」は「同時手番」があるからこそ採用できるルールということに気づきました。これは、「重ねる」と「同時手番」を混ぜる理由として十分だと思い、重ねる同時手番のゲームとなりました。
テストプレイを重ねてみると、全部のコマを使うのはちょっと長すぎるかもと思い、6×6マスで、それぞれ20枚ずつコマをもって始めることにしました。
バランスを調整する
このとき、バッティングがおこるように、ひっくりかえして逆転ができるようにと派手目な調整をしていましたが、あまり周りにこういったアブストラクトをプレイする人が周りにいなかったため、フィリットというゲームを作り、様々なアブストラクトを遊んでは配信しているラディアスリーの中村さんに相談したところ、テストプレイをしていただけることとなりました。
<対戦する中村さんと加藤さん。ありがとうございました。>
そうしてプレイしていただいた結果、いくつかの意見をいただきました。それを僕なりに勝手に解釈すると、
・今遊ばれているアブストラクトは将棋のような重さや競技性はそこまで求められていなさそう。
・アブストラクトもライトで楽しくてよい。
・他のアブストラクトと比べると、やや雑多な印象を受ける。
・でも読みあいは楽しそう。
・6×6はちょっと狭いかも。
どっちの方向に進むべきかちょっと悩みました。
そこで、いままでと真逆にちょっとルールを落ち着ける方向で考えてみることにしました。具体的には、置く場所を公開したとき、先に置けたかどうかの判定を先にして、バッティングを後にするなどです。
それをもって、アブストラクト好きが集まる土嚢の会に持って行ってみましたが、どうもいまいちでした。
<土嚢の会でのテストプレイ。ごいた喫茶マーブルさんにて、おしゃれ!>
やはり、このゲームはバッティングすることが醍醐味。少々雑でも派手な方がこのゲームには合うようです。
そうやって、今のルールに落ち着きました。
コンポーネントを考える
基本はリバーシなので、市販のリバーシが使えないかを考えました。色々さがしてみましたが、ダイソーに売っている500円のゲームが非常にできがいい!それをベースにすることにしました。これはダイソーで大量注文してゲットしました。
自分のコマを置く位置を指定するのに、最初はカード型のホワイトボードにペンで場所を「3C」みたいな感じで書いてやってみたのですが、取り回しが悪くてストレスでした。そこで、盤面を印刷したカード型のシートに、磁石で指定する形を考えました。家にある水回りの広告のシート型の磁石に縮小した盤面を印刷し、それにネオジム磁石で指定することにしました。
これが非常にやりやすかったです。
どこの位置かを確定させるために、盤面を4色に色付けするためにシールを注文して、1つずつ貼りました。
バッティングした場所を指定する磁石もダイソーの磁石がもっともよかったのでそれにしました。しかし、バッティングチップは色指定ができず、なんとか友達にも頼みつつかき集めることに成功。
これらをコツコツと丁合して完成となりました。
最後に
ということで、なかなか面白いプレイ感のゲームができたと思います。
最初の 1 回は、どうしてもオセロっぽいプレイをしがちですが、何回かプレイすると、
・相手が角に置きそうだからバッティングさせてやろう。
・バッティング狙われてそうだから、1 回別のところに置いてみよう。
・残りあと 3 個か…。どうおいていこうか。
・ここは重ねてみるか。
と、だんだんとコツがわかってきます。
「かさねる同時リバーシ せーのでツミクル」は、ゲームマーケット2021秋にて販売開始いたします。
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