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#56 図面が正しく見える問題
今日もお疲れ様です。
今日は、これまで数年間工事監督をやって、問題に思っていることをまとめようと思います。それはずばり、「図面が正しく見える問題」です。
図面がすべての起点なのに
工事する上で、図面は必須です。間違いがあれば、目的のものができません。工事の数量やお金を算出したり、施工計画を考えたりと、発注から工事実施、完了に至るまで、図面はすべての起点になるものです。
しかしながら、図面を作るのは人間。人間は誰しも間違いがあり、完璧な図面を作り上げることは非常に難しいです。
正しくあるべきはずの図面なのに、そもそもの図面があっていないことが少なからずあります。
図面が正しく見えて疑わないリスク
それでも、大半の図面の間違いには、工事を進めながら気づけます。それは、実際に物ができてくると、より完成のイメージが近づくためでしょう。それはそれで良いと思っています。
僕が問題だと感じているのは、作られた図面が「正しく見えてしまう」ということ。これにより、図面そのものを疑うことがなくなります。疑わなくなれば、間違いに気づくことはありません。
工事を進める中で気づいた間違いはその時々で直していけば良いのですが、すべての間違いに気づくことはこれもまた難しい所業です。工事によっては数100枚の図面があり、すべての図面を細かくみることはほぼ不可能です。
図面の精度を高めるには
どうしたら、図面の精度を高められるでしょうか。
①間違いに気づく仕組みを作る
要所で図面をチェックする機会があります。しかし、それでも間違いが発生します。
僕の経験では、報告書に書いてある内容と図面の内容に齟齬があるという事例がありました。
設計業務の中でコンサルタントに図面を作成してもらうと、それが正に思えて疑う余地がありません。
ここで、そもそも出来上がった図面が、報告書の思想と適合しているのかを確認する機会が必要です。まずは、間違っているものと思って、疑いの目で見始めることです。本来は受注者の照査技術者がやるべきですが、発注者側も責任を持って見なければなりません。
また、図面ができたら、複数人で現地確認をすることも有効です。多くの場合、図面作成は机上作業です。現地確認を端折る人がいます。実際みたら間違いが一目瞭然ということは意外と多いです。現地確認は間違いに気づく有効手段と言えます。
②そもそも間違いにくい仕組みを作る
2次元同士の図面では、図面同士で示すものがバラバラであるので、図面間の突合がしにくい問題があります。
これを3次元の図面が解決してくれます。例えばBIMやCIM、3DCADなどの活用が有効でしょう。3次元で完成形がイメージできたり、構造物同士の取り合いも事前に確認できます。図面間の突合も手間が省けますし、間違い自体を減らすことにつながります。
3次元データを使えない場合でも、一度存在する構造物を重ねて描いてみることも有効です。すると、構造物同士の干渉や、同じ構造物の図面間の齟齬に気づく要因になります。
③工事の様子を見て、図面に見慣れる
身も蓋もない、結局はこれかもしれません。答えは現場にあります。机上の空論ではなく、実用性のある図面を描くには、生の現場を見ることが一番です。そして、図面に見慣れることが大切です。
これは一朝一夕にはできません。課題をもって図面をみて、現場を見て、感じたことをアウトプットすることの繰り返しで、身につきます。
以上、「図面が正しく見える問題」の提起とぼんやりした解決策の提案でした。
実際には、時間的制約や人材配置の問題で、図面を確認する時間がそもそも与えられていないという、根本的な問題も背景にあります。こっちの方がより問題なのですが、それはまた今度。