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le 14 juillet, オスカル・フランソワにありがとう

私はオタクなので(※)大学時代に聖地巡礼よろしくフランスに留学し、帰国を2週間後にひかえた2010年7月14日にはパリ祭に参加しました。

(※「私はオタクなので」とは、オスカル様に恋をし、アニメ『星の王子様』を見て空を眺め、ジャンヌ・ダルクに憧れて幼少期を過ごしたことを指す)

パリ祭は日本語だけの呼び方ですが、1789年のバスティーユ牢獄襲撃に由来するフランス革命を記念した建国記念日のこと。フランス語では「7月14日」=le 14 juilletなどと言われます。詳しくはこちら。

昼間は軍事パレードがあり、夜はエッフェル塔の背景に花火が上がります。スタートは夜23時から。というのも、真夏のパリでは22時頃まで日が沈まないので。

公園には夕方から大勢の人が集まって、のんびりお酒を飲んだり、本を読んだり、おしゃべりしたり…思い思いに過ごしていました。

長い長いマジックアワーの空を見上げて、雨上がりの爽やかな夏の風に吹かれながら、花火が打ちあがるのを待つこと数時間。

1年間フランスにいたけれど、街が、人が、あれほどの熱気に包まれたことは他になかったと思う。彼らの心に満ち満ちていた歓喜のエネルギーは私にとっても心地よく、同時に得体の知れないものでもあった。

日本にも建国記念日はあるけれどお祭りではないし、近い趣旨の行事といえば終戦記念日になるだろうか、それこそお祝いするような日ではない。日本に生まれ育った私には、le 14 juilletの歓びを心の底から感じることはできないんだ、と思いながら、深夜のパリの街を歩いた。


それから9年が経って。「平成最後の日」に『レ・ミゼラブル』を観劇した私は、あの日わからなかった何かに、触れることができた、気がしている。

2019年4月30日の夜公演はイープラスの貸切で、私は1階席後方の中央寄りの席から、まさに周囲に埋もれるように(帝国劇場1階席に座ったことのある方には伝わるであろう…)舞台を観ていました。

『レ・ミゼラブル』観劇は初めてではなく、その回は率直に言って個人的ベストお気に入りキャストさんというわけでもなかった。にもかかわらず私は史上最高に号泣して、っていうと安っぽくなっちゃうんだけど、意味がわからないくらい泣いた。

カーテンコールでは貸切公演の特別イベントとして、キャストさんと観客で一緒に「民衆の歌」を歌いました。そのとき私は、まるで自分がパリの民衆のひとりになったかのような錯覚にとらわれた。私、いまあのパリの街にいる、と。

まあ、『レ・ミゼラブル』は1832年のパリ蜂起が題材なので、1789年のフランス革命とは違います。違うんですが。


8月15日の終戦記念日には、ずっと、失うことを学んできた。それはこれからもきっと変わらない。でも、フランス革命は、あの日の『レ・ミゼラブル』は、自由を勝ち取ること、生きることの歓びを、みんなで分かちあうのがどれほど素晴らしいことなのか、教えてくれました。

漫画で見たあの国に行ってみたいーーそんな気持ちで、気軽に外国に行ける。他の国や民族の文化に触れることができる。何百年も昔に書かれた作品に出会える。好きなだけ漫画を読んで、舞台を観て、感動できる。人はそんなことしなくても生きていけるけど、それがなければ生きられない。

全部、たまたまこの時代に生まれたおかげで、これまで何百年、何千年と紡がれてきた歴史のおかげで。そこにはたくさんの人の命の物語があったんだってことを、私は9年経ってようやく、体感して、理解しました。

もし小さい頃にオスカル様に出会わなかったら、きっと一生わからなかった。le 14 juilletの今日という日に、オスカル・フランソワに、ありがとう。





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