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心に引っかかっている本を再読すると見えてくるもの
最近、だいぶ前に読んで、心に引っかかっている本を再読するのにハマっています。
書くためのネタ探し、という側面も若干ありますが、前回はスルーしていた文章に心を打たれたり、膝を打ったり。
新たな発見があって、なかなか楽しい。
海外にまで(私は海外在住)わざわざ持ってこようと思った本なので、私の内面を刺激する何かが秘められていることは確か。
ハズレなしの読書体験が保証されているわけです。
年齢を重ねたからこそ受け取れるものがある
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今回再読したのは、こちらの本。
私が持っているのは、PHP研究所から出ている上製の単行本ですが、絶版になり、現在はちくま文庫で復刊されているようです。
初版が出版された20年ほど前、私はたまたま書店でこの本を見つけました。
自分に必要なことがガツンと書いてあるわけではないけれど、すごく大切なことが書いてある気がして、今までずっと手元に置いてあります。
冒頭に書いてある、著者さんが高校生のときに経験したピアノの先生とのエピソードが、なんともいえず心に残っていたんですよね。
この本のテーマは、
☑️他の誰でもない自分自身の幸せをどうやってデザインしていくか。
☑️自分の幸せに大きく関わってくる<他者><社会>とどうやって距離を取っていくか。
という大きくて普遍的なもの。
はじめてこの本を読んだ、まだわずかに青春を引きずっていたあの頃よりも、再読した今のほうが何倍も深くこの本のメッセージを受け取れたような気がします。
人間の幸福って何だろう?
っていう、最初に挙げたこの問いに、今のぼくなら次のように答えるだろう。
幸福の具体的な形は何なのかは、人によって異なる。
でも、人間の幸福にはある「一定の条件」があり、それはわりとかっちりとした形で取り出すことができる。と。
ではその「一定の条件」とはなんだろう。
それは、「自己充実をもたらす活動」と「他者との交流」(「つながりそのものの歓び」と「他者からの承認」からなる)という2側面だ。
「自己充実をもたらす活動」というと「やりがいのある職業」「自分の個性を生かす仕事」といったイメージがどうしても先行する。
やりがいがあって、個性が生かせて、しかも自分が本当に好きな仕事を職業にできればそれは幸せなことだろう。
しかしすべての人がそんな仕事を見つけられるわけではない。
だから、仕事以外の活動の中にも「自分にとっての<ほんとう>」を求めることができる態度を磨いておくことが大切だと思う。
著者と近い抽象度で世界を眺められるようになる
![](https://assets.st-note.com/img/1726633032-rMeHWL1NI2b38knCFTy06OvP.jpg?width=1200)
著者の菅野さんは執筆当時、大学の助教授として社会学を学生たちに教えていたようです。
それも影響してか、本全体を通して学生に向かってやさしく話りかけるような文体。
内容も、大学生くらいになって自分と他者、自分と社会との距離感に迷い始める頃に合わせてデザインされているのがわかります。
実際、この本を手に取ったときの私は、まだ大学生に毛が生えたような社会人だったので、まさに読者ターゲットだったはず。
しかし、再読している今の私は、むしろ執筆当時の著者に近い年齢です。
以前noteに書いた「抽象度」の話に通じますが、著者がこの本で語りかけている読者に同化していた初読時の自分は、著者が見ている抽象度で世の中を見ることができていませんでした。
ある分野において、具体⇄抽象ピラミッドの「上(抽象)」にいる人が見ている世界を「下(具体)」にいる人は見ることができません。
↑
初読時の私は、まさにこの状態だったわけです。
年齢を重ねて著者と同じ世代になった私は、以前より高い抽象度でこの本のメッセージを受け取ることができるようになっていました。
著者が書いていることが、そのメッセージの切実さが、実感を伴って伝わってくる。
また、自分が親世代になったことで、わが子を含めた若者世代に手渡したい言葉も、この本の中に見つけることができました。
この視点も、以前は持ち得ないものでした。
☑️弱い自我を抱えながらも、自分をまるっきり変えよう、変えたいとは思わなくていい。
☑️「これが自分なんだ」と自分で自分を認めてあげよう。
☑️自分の弱さを認めながらも、一歩前に踏み出す。弱さから出発しよう。
☑️多少傷つく場所でも出て行かなければいけないときもある。
☑️そのときに致命傷を負わないだけの「精神的な構え」を持っておこう。
☑️純度100%の関係を相手に求めない。
☑️バランスのとれた「よそよそしさ」が人とほどよくつながるための必須条件。
具体的なスキルが身につく本ではありませんが、「ああ、そうだよね。幸せってこういうことだよね」と「幸せの形」をふんわり捉えられるような、そんなやさしい一冊。
この本のタイトルがなぜ『愛の本』なのか、はじめて読んだときから実はずっと疑問だったのですが、やっと少し理解できたような気がします。
いつか子どもたちが必要なときに手に取れるように、引き続きこの本は本棚に置いておこうと思います。
皆さんも、本棚に眠っている本を再読する機会を持ってみてはいかがでしょうか?
以前とはまったく違った感想を持つかもしれませんよ。
そして、そのときに感じた過去の自分との「差分」は、あなたがもがきながらも着実に日々を積み重ねてきた証なのだと思います。
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