
【さぶれ閑話】さぶれ部のはじまり
たしか房総半島の小さな駅だった。
遡ること2005年の冬の日、出張で訪れたその駅の売店で何やら印象的な形のサブレを見かけたのだ。
そのサブレの形どころかモチーフが何だったのかすらすっかり忘れてしまったが、ただ、こんなサブレがあるんだなぁと思ったことだけは覚えている。

その週末、鎌倉へ出かけることになり、当然のように名物の鳩サブレーを食べた。
大きい、そして可愛い。
味はもちろん良かったが、それ以上に、旅情を盛り上げてくれるその形に満足感を覚えた。

それから間もなく、福岡を訪れる機会があり、空港で土産物を物色している時に目に入ったのが、「博多ぶらぶらサブレ」だった。
幼い頃、テレビコマーシャルで見ていた博多ぶらぶらのキャラクターに懐かしさを覚え、思わずそのサブレを手に取った。
その瞬間、幾つかの点が繋がり、自分の中に面が生まれるのを感じた。

そして、見えてしまった。

サブレ・・・、いとおかし。
もともと蒐集癖のある性分なので、そこから先は自然な流れだった。
どこかへ出かける度に売店を覗き、新しいサブレを見つけては、食す前にその形を写真に収める。そんなひとり部活が、静かにゆっくりと始まったのだった。