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シノイキスモス短編小説集

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フィクションです。
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2020年5月の記事一覧

短編小説|ゴリラの木と入れ代わる

 窓の外を眺めていると、少し離れた丘の上に生えている1本の木が、ゴリラのように思えた。窓の外を眺めていたのは、ぼくの仕事が家の中でパソコンに向かってつまらない文章を書き続けることで、それよりも窓の外を眺めている方が幾分か楽しかったからだ。それで、少し離れた丘の上に生えている1本の木が、ゴリラのように思えるところまできてしまっていた。だってしょうがないじゃないか、仕事は本当につまらないし、その木は本

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短編小説|人類の絶え間ない沈黙

 彼女はAIで、この国の主要なソーシャル・ネットワークをクロールして、市民がネット上に発信する情報を解析するのが仕事だった。運用が開始されてから休むことなく、日に何十万件もの投稿を解析した。膨大な文字列のほとんどは、他愛のない挨拶、日記、ジョーク、詩、詩のようなもの。彼女にとってあまりに意味のない、情報の奔流。それらをかき分けて真実を求めていた。

 ある夜のこと。相変わらず彼女は解析を続けていた

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短編小説|壁と広場

短編小説|壁と広場

 列車が街に近づくにつれて、車窓から見える風景の中に赤茶色の家々が増えていって、ついにはすべてが赤茶色になった。「これがマラケシュだよ」サミールがいった。ぼくはカサブランカで会ったトシさんが、マラケシュの街が赤茶色なのは、実は赤茶色の家以外建てちゃいけないって条例があるからだ、といっていたのを思い出していた。マラケシュの駅に到着すると、サミールは空腹だったので、ぼくたちは駅舎の2階にあるカフェでク

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