日記|ねぇ、漬物に醤油ってかける?
友達と韓国料理屋さんに行って、サムギョプサルをはむはむしてた時に、急に聞かれた。
「するめちゃんは、漬物に醤油かける?」
と、静岡出身の友達に聞かれた。
「えっ?漬物に醤油?かけない!かけない!」
「そうだよね!彼氏が関西出身じゃない?で、漬物に醤油かけてたんよ。関西の文化なのか、それとも彼氏の文化なのか、気になってツッコめないんよ」
「いやいや!醤油なんてかけないで・・・あれ?」
あれれ??頭の中で、沢庵に醤油をかけるイメージをしていたが、違う!!
私が大阪から静岡へ移住してきた頃の話を、しようじゃないか。
もう、静岡へ移住して10年以上経つ。
大阪弁で話すことも少なくなってきて、しぞ~か弁で話すことが多い。
夫は静岡出身で、両親も静岡出身なので、生粋のしぞ~かっ子だ。
私も大阪出身で、両親もほぼ大阪出身なので、生粋の大阪っ子。
文化が、何もかも違うのだ。
夫は、一人暮らしが10年以上していた割には、料理を作れない。
彼曰く「俺は作れないのではなく、作らないだけ」と言うが、付き合った当初「カレーって作れる?自分で作れないから、作って欲しい」と言ったその口は、どこへ飛ばされたのであろうかと、考えるときがある。
そんなこんなあって、私が料理担当をしている。
実家でも料理担当が、私だったり、お姉ちゃんだったり、お母さんだったりしていて、お母さんが作る料理をマネしながら、私やお姉ちゃんが作っることが多かったので、必然的に大阪の味が食卓に並ぶことになる。
新婚の時に、こんな夜ご飯を作った。
生姜焼き、ご飯、お味噌汁、サラダに、壬生菜の漬物。
別に何の変哲もない、夜ご飯。
ツッコミどころのないご飯だと思うが、夫はこう言った。
「なんで、壬生菜の漬物に醤油かかってるん?」
「はぁ?壬生菜の漬物には醤油かけるやろ。何言ってんねん!はよご飯食べ」
また別の日に、こんなご飯も作った。
大根の煮物、ご飯、刺身、お味噌汁、高菜の漬物。
これも何の変哲もない、夜ご飯である。だが、夫はこう言った。
「だから、なんで高菜の漬物に、醤油かかってるん?」
「あぁん?高菜の漬物は、ごま油で炒めて醤油で味付けて、七味かけるのがスタンダードやろ?」
「俺は、食べられへん!しょっぱすぎる!」
どの口がゆうとるんじゃ!!と喧嘩した。
そうなのだ、漬物には醤油をかけない民が、いることを知らなかった。
というか、漬物に醤油かけるという行為が普通すぎて、醤油をかけていることを忘れてしまっている。
そして、静岡の人は毎日、漬物を食べないらしい。
しかも、昆布の佃煮は、食べないらしい。
この度重なる、漬物戦争の末、毎日漬物を食卓に出すのを辞めて、私だけの漬物を買い、私だけがちょこちょこ食べる生活を送っている。
これが、私の移住してきて受けたカルチャーショックだ。
私は、思いとどまり、
「違う!私も、漬物に醬油かけるわ!」
と、友達に答える。
「えっ?しょっぱくないの?」
「さすがに沢庵には、醤油かけないよ。でも、壬生菜の漬物にかけるし、高菜の漬物なんか、炒めてから醤油かけるよ」
「白菜の浅漬けは?」
「醤油かけて、なんだったら鰹節もかける」
そう、醤油かけるし、鰹節や七味をかけたりもする。
友達に新婚の時の話をすると
「えっえ!!うちの実家で、漬物が毎日食卓に並ぶことないよ!」
ずっと疑っていた「夫の家族だけ」ではないらしいことが、分かってしまった。
「そうか・・・日本の国土って狭いのにこんなにも食文化が違うもんなんだね」とお互い納得しながら、サムギョプサルを葉っぱに巻いて、もぐもぐした。
サムギョプサルを食べつくし、カンジャンケジャンが右足と左足で、食べにくさが変わるということを、発見をして二人で爆笑した後、注文したキンパがテーブルに並べられた。
「うちの実家では、キンパが冷凍庫から出てくるよ」
と私が言うと
「えっ?キンパが?冷凍のを買ってるってこと?」
もうそれは、友達はキンパをモグモグさせながら、驚いていた。
「ううん。お母さんが大量に作って、冷凍庫に入れて、いつでも食べれるようにしてるみたい。ご飯を毎回炊くの面倒だから、大量に米炊いて、キンパにして、ご飯として食べてるらしい」
お母さんが、編み出した技かのようにドヤ顔で、教えてくれたことを思い出す。母曰く、お肉だと、解凍した時に美味しいらしい。
「するめちゃんの実家はオシャレなものが出てくるんだね。うちの実家はキンパなんて出てこないよ~」
「私の家では、晩御飯よ~と言って、太巻き2本だけの時もあるよ」
「太巻き2本??節分だから?」
友達は、静岡出身だから太巻き文化がないのだ。
「ううん。普通の休日の時に。晩御飯が、太巻き2本だけ」
「太巻き2本・・・・」
と友達は困惑していただが、多分それが正常な反応である。
それから、私は「晩御飯よ~」と言って、何が出てくるかという話をして、友達と笑い合った。
ケサディーアをトウモロコシ粉100%で作って、忍者せんべいになってしまい、食べたら、ばいぃぃ~んってなった話。
晩御飯をうどんと、太巻きにしたら、夫から禁止令が出たり。
節分の時だけ、解禁にしないと一揆すると言って、解禁を勝ち取った話。
家に来た友達にタコスを振舞って、困惑させた話。
一度も食べたことのない、ビーフストロガノフをレシピと感覚が作って、本当に合ってるか結局分かなかった話。
私の家のご飯は、多種多様なのだ。
「するめちゃん達は、そうやって食のすり合わせをしていって、素敵ね」
とすごく綺麗にまとめてくれた。さすが、秀才な友達である。
私の家では、ご飯戦争が勃発し、和解し、妥協して、食卓に並んでいるのである。