日記|夫は、刑事コロンボである。
私の夫は、刑事ではない。
ただのコミュ障のおじさんであるが、彼は刑事コロンボだ。
そんなコミュ障のおじさんは、なんの気の迷いか、営業職をしていた。
彼は常々「totoが当たったら、山を買ってそこで一人で引きこもって暮らす。もう誰とも会わない生活を送る」と言っている。
宝くじが当たったら、私と夫は、強制的に別々に暮らすことになるらしい。
手切れ金として、当選額の三分の一は私にくれるらしい。
そのお金で私は、海外へ飛び立ちバックパッカーになろうと思っている。
そんな人嫌いの夫は、約10年ほど営業職をやってのけたのだ。
私は、案外営業職が向いているんじゃないか。と今も思っているが、彼は彼なりに辛かったそうだ。
聞くところによると、夫の営業先の評判はこうだ。
「なんか、いつも頑張ってくれている」
「一生懸命、ないものを探して、似たような商品を紹介してくれる」
「できないと言われたことがない」
こう聞くと、一生懸命仕事して、営業して、凄いな~とおもうんだが。
鼻から無理難題を押し付けて来たり、営業の分際で!という態度のおかしいお客さんには、めっぽう厳しい対応をとっていたそう。
夫曰く「営業も人間だから、良くしてくれるお客さんには俺も、出来る限るのことをする」そういうスタンスで、仕事をしていたらしい。
人が良さそう。というだけでは、営業という仕事は、出来ないらしい。
それに加えて、コミュニケーションが必要なのだそうだ。
コミュ障のおじさんが?コミュニケーションが必要?
無理ゲーだと思っていたそうだが、一つだけ、技を見つけたらしい。
それは、刑事コロンボの真似をしたそうだ。
「うちのカミさんがね~」と皺くちゃなコートを身にまとい、眼光鋭く、事件を解決するあの、刑事コロンボである。ちなみに夫は、老後の楽しみは刑事コロンボを全話見ることらしい。
コミュニケーションを取るきっかけとして
「うちの奥さんは~」と話しかけて、担当者と仲良くなるらしい。
私の趣味が手広いことに加え、食い道楽という万人受けする道楽を持っているのと、やたらと旅行をするので、話題に事欠かないらしい。
「うちの奥さんは、今度、北海道へ旅に行くみたいで~」と言ったり、
「うちの奥さんは、カレーに凝っていて1週間カレーなんですよ~」とか
「うちの奥さんは、メダカにハマっているみたいで~」などなど。
こんな風に話しかけては、仲良くなる。
「えっ?そんな個人情報を流されて平気なの?」と思うかもしれないが、平気である。全て本当のことだから。なんだったら、それで営業成績が良くなるのであれば、存分に使ってください。って思うのだが、
一つだけ困ったことがあった。
一時期、お弁当を作っていた時があった。
当時、お弁当を作るのがどうも苦手で、どうしたらいいのか、悩みあぐねいていた。
真冬のある日。
チャーハン弁当にしよう!とおもいチャーハンを作り、お弁当箱を二つ用意して、熱々のチャーハンを入れて、蓋を閉めた。
食品関係に勤めている皆様は、気が付いたであろう・・・。
これが、いわゆるチャーハン症候群だ。
チャーハンの真ん中の部分が温かいままになり、菌の発育に丁度いい温度のまま保たれて、菌が増殖して、食中毒を起こすというあれだ。
次の日
私は、お弁当を開けて、チャーハンをスプーンですくうと、糸が引いた。
あれ?なんだこれ?と思い、匂ってみると「うえっ!腐っとる!!」こりゃダメだ!!と思い、ゴミ箱に捨てて、カップラーメンを食べていた。
普通の奥様なら、旦那さんに「気を付けて!腐ってるかもしれない!!」とLINEをするだろうが、私はしなかった。煙草吸うのに忙しかったから。
煙草を吸ってると、夫から「チャーハン気を付けた方がいい!腐ってるかも!」とLINEがきた。
うん。知ってる。と思い「あぁ~あんたのもダメか」と返した。
夫は家に帰ってきて「あれは、食中毒になる危険性があるらしい。今日行った営業先で聞いてきた」と騒ぎ始めた。
「えっ?そうなんや!!!死ぬ可能性もあったってこと?もうだめだ!一生、お弁当つくらない!!」と自分を悔いて、お弁当作りを辞めた。
というより、そんな失敗を営業先の方々へ、話し回ったのに、腹立ったのだ。
「あそこの研究所では、こう言われた」
「食品会社で、学校で習ったことのある話だと言われた」などなど
聞いていると最初は、申し訳ないことをしたと悔いていた気持ちが、だんだんと腹が立ってきて。
「ボケ!いらんことばっか話すな!!」とキレ散らかした。
夫は「会わない人なんだから、いいじゃんか・・」と言っていた。
まぁそうか・・と思い、とりあえずお弁当は一生作らないと宣言し、収束。
その何年後・・。
「学校で習ったことある話だ」と言ったその人が、私の友達になった。
取引先の担当者の友達になる?そんな不思議な関係ってある?と思うかもしれない。だが、本当の話。
夫は、ことあるごとに、取引先との飲み会に、私を連れて行く。
なんて、アメリカンな旦那さんなの!!と思うかもしれないが、違うのだ。
私のコミュニケーション能力をふんだんに使って、自分が話さなくてもいい状況を作るために、私を連れていっている。
だが、私も逆手にとって、ここぞとばかりに色んな業界の人と話を聞いて、面白がっていたのでWinWin。
そんなこともあったり、取引先の担当者の人を呼び、ホームパーティーをしていく内に、仲良くなっていき、友達になった。
ある日、その友達とチャーハンの話になった時に言われた。
「そういえば、するめちゃんチャーハンで、菌を増殖させてねばねばチャーハンになったんだよね!昔学校で習った~。チャーハン症候群!!」と笑いながら言われた時に、カッときしまい。
夫に「おめー!あん時に知らん人だからいいやんって言ったけど、知らん人じゃないやんけ!!」と怒ると「まさか、友達になるとは!!」と笑っていた。
もう、刑事コロンボ禁止!!と言ったが、今の職場でも刑事コロンボは活躍されている。
私が突飛容姿もないことを言うと
「今度、職場の○○さんに、うちの奥さんはね~ってこの話言おうっ!!」と、転職先の職場での人間関係作りに刑事コロンボは大活躍中だそうだ。
彼が刑事コロンボで、コミュニケーションを取れるならいいけどさ~。
夫がピーター・フォークと違うのは「うちのカミさんがね~」のカミさんと言う名の私が、ホイホイと飲み会に参加してしては「ウェーイ!」と飲み会を楽しんでしまうことだ。
本当に、カミさんがいるのねって、みんな思っているはず。