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映画感想文「ミマン」人との出会いのご縁とすれ違うほろ苦さを描く会話劇
不思議と印象に残る作品。
それは、こんな風な淡い思い出は誰しもあり、普遍なものだからであろう。
(多少のネタバレあり。見たくない人はここでストップ)
3編のオムニバス映画。三つともに時間軸を変えて、同じ男女が出てくる。そして毎回彼らは同じソウルの街を歩き、車で通る。その中で彼らの変遷が見えて興味深い。
タイトルのミマンには複数の意味があるそう。それがそれぞれ、この男女の近づいては離れてく関係を示してるようでほろ苦い。こういうのってよくあるよね、とリアルだった。
①迷妄(道理に暗く、要領を得ずに戸惑うこと)
②未亡(忘れようとしても忘れられない)
③彌望(遠く広く眺める)
①習い始めたばかりの絵画教室へ行こうとして道に迷う彼。途中で仕事に向かおうとしていた彼女とばったり出会う。しばらくふたりで並んで歩く。2年ぶりに会ったふたりは互いの近況を確かめ合う。
おそらく、彼女が彼に興味あり、彼も満更ではない。彼氏とは別れたの、と話す彼女。しかしいま彼には付き合いたての女性がいる。
何も起こらず「じゃあ、またね」と別れるふたり。
②①からしばらく後。それぞれ別の人と同じ道を歩く、彼と彼女。彼は付き合ってる女性と昼間に。そして彼女は彼女に好意を寄せている仕事関係の男と夜に。同じ道を別の人と歩くが彼らは決して出会わない。それでも、互いの頭の中にはそれぞれが浮かんでることが会話から感じ取れる。
③②からもまた時間が経っている。今度は共通の友人の葬儀で出会うふたり。若くして無念の中、亡くなった友人を悼む彼ら。人生には終わりがあることが暗示される。同時に縁がある人とはこうして、何度も出会うのだ。
久しぶりに出会ったふたりは少しぎこちない。互いに仕事も変化があり、最後に会った時とは違う環境にいる。②の女性とはうまくいってるのか、彼に質問する彼女。別れたと答える彼。しかし彼女には付き合ってる男性がいた。
その後、①よりおそらく前に若き頃に訪れた馴染みの店に向かうふたり。そこで懐かしの曲を歌う彼。それを聴こうとするやいなや、付き合ってる男性の家族からの電話に出る彼女。
結局すぐに帰らないとならなくなった彼女は先に店を出る。ひとり店に残る彼。
こうして、今回も彼らはすれ違う。
抑揚がない会話劇。うっかりすると眠気に襲われる危険はある。
それでも、こうやって人と出会い、言葉を重ねながらいろんな感情をやりとりしていることをしみじみ痛感する愛おしい作品である。
未来を暗示させるようなラストも好きだ。