映画感想文「阿修羅のごとく」向田邦子の昭和名作。四姉妹で描く女のややこしさ
昭和の名作である。
向田邦子「阿修羅のごとく」。テレビドラマ放映は1979年。子供の頃、訳もわからず観た記憶がある。大人の機微なんてわからない当時、もちろんよく理解できなかった。
長じてから小説として手に取った。うまいっ!と思わず、唸った。以来、何度読んだことか。
何度読んでも姉妹の関係性の微妙さ、女という生き物のややこしさ、について考えさせられる。
先日、是枝裕和監督でNetflixにより映画化されるというニュースをみた。そうだった。確か20年前にも映画化されたなと懐かしくなり、視聴した。
母に八千草薫、四姉妹には大竹しのぶ、黒木瞳、深津絵里、深田恭子、という布陣。監督は森田芳光。
キャスティングが良い。更にいずれも好演している。
しかしその中でも、圧倒的に、大竹しのぶの優勝であった。いやほんと、すごい女優だ。華があり、艶めいている。女の私も思わず吸い込まれそうになる。吸引力の半端ないこと。
彼女が演じるとその役がイキイキと動き出す。ほんとにそこにいるかのように体温を持って伝わる。そして立体的になる。いけすかない嫌な女にもなるし、たまらなく可愛い砂糖菓子のような女にもなる。その七変化に圧倒される。
びっくりしたのは次女(黒木瞳)の娘役が長澤まさみだったこと。今気付いた。でも、そうだった。本作は2003年公開。彼女の出世作の「世界の中心で、愛をさけぶ(2004年公開)」の前年だ。まだ彼女を世の中が発見する前である。
来年1月公開映画は、宮沢りえ、尾野真千子、蒼井優、広瀬すず。これまた完璧な布陣である。いまから楽しみにしている。