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映画感想文「ぼくのお日さま」キラキラとしたある冬、確かにそこにいた僕たちの物語

余白のある作品だ。

多くを語らない。それでも演者の吐息や目線、場面の展開など、セリフ以外にたくさんの情報が溢れてる。

それを見つけ、ひとつひとつ自分の解釈ができる喜びよ。これぞ映画オタクのパラダイスである。

雪深い東北の街。吃音の中学生タクヤ(られ越山敬達)は次男坊。テキパキとしてる兄の陰に隠れ、おっとりと生きてる。

この町では夏は野球、冬はアイスホッケーをやるのが少年たちの見えない掟だ。だが、どちらも苦手なタクヤ。しかしある冬の日、すぐ隣で滑るフィギュアスケーターの少女さくら(中西キ希亜細良)に、心惹かれる。

さくらのコーチは、東京からやってきた荒川(池松壮亮)。田舎町では少し目立つ存在のよそ者だ。

憧れが高じて自らもフィギュアスケートを踊ろうとするタクヤ。それをみた荒川はある提案を二人に持ちかける。

14-15歳の少年少女の危うさ、ピュアさ、そして残酷さを余すことなく描く。それはみてられないくらいにヒリヒリと、痛い。

でも映画の中の大人たちは(少なくとも荒川コーチは)、それをただ静かに受け止める。池松壮亮の抑えた演技が最高。

見応えのある作品である。私はとっても好きだ。

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