
映画感想文「青春18×2 君へと続く道」ロードムービーとしても素晴らしい王道ラブストーリー
こんな思い出、自分にはあるかな。
胸に手を当てて、思わず思い起こすような作品だ。
18歳の時に出会った4つ年上の初恋の人。台湾人の彼が36歳になったいま、彼女の祖国である日本を訪ねるロードムービー。
高校3年生のジミー(シュー・グァンハン)、22歳のバックパッカーのアミ(清原果耶)。主演の二人のフレッシュで的確な演技に引き込まれる。
実際には33歳のシュー・グァンハンが18歳に見える演技をしているのがすごい。その年代ならではの高校生男子のモヤモヤや初々しさを余すことなく体現していた。化粧や髪型で誤魔化せる女性と違って男性の方が難しそうなのに違和感ゼロである。これはやはり俳優としてのレベルが高いということではないか。
清原果耶も素晴らしい。年下の男の子に甘えたり、でも大人になってリードしたり。そして時には揶揄う。いかにもあるあるな感じがよく出ている。そして何より美しい。でもって少しだけ、ミステリアスである。忘れられない年上の女性として大切な2点である。それを見事にクリアしている。
この年代の4歳差、しかも女性が年上はかなり大人度が違う。だから終始ジミーは押されっぱなしである。そんな様子がとても微笑ましい。
直球のラブストーリー。でもどちらかというとロードムービーとして出来が良い。なにしろ台湾と日本、それぞれのドローンで空撮したであろう景色がとっても素晴らしい。またアミが台湾で、ジミーが日本で、出会う人々とのやりとりの温かさにいちいち胸が熱くなる。
後半の日本編では、東京、鎌倉、長野、新潟、福島が登場。特に東北の雪景色は絶景。アミの故郷である東北。更に雪の降らない台南に住むジミーにとってそれは特別な景色となる。
そして、このシーンに登場する幸次(道枝駿佑)とのエピソードもとても良いのだ。こんな風に旅はたくさんの行きずりの人との出会いに満ちている。例え瞬間でもその出会いで励まされたり気付かされたりする。そんなことを思う。
他にも黒木華、松重豊、黒木瞳。ジョセフ・チャン。と短い登場場面ながらいずれも記憶に残る演技であった。
割とありがちな脚本ではある。しかし、ロードムービーとしての出来の良さと演じ手の好演で素晴らしい作品に仕上がっている。
またミスチルの歌う主題歌「記憶の旅人」が、映画に正にぴったりな曲。エンディングで流れると確実に泣ける。ということで、観て間違いのない王道ラブストーリーである。