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映画感想文「コヴェナント約束の救出」見応えある映画。だが、この事実に違和感あり
やっぱり私、愛が苦手だ。
それを痛感した本作。
2021年8月30日。アフガニスタンから米軍が撤退完了した日。ついこの間のことだ。同時多発テロから20年。本当に長い戦争であった。
本作はその前、2018年のアフガニスタンで実際にあった出来事を映画化した作品である。
タリバンの爆薬庫を探して破壊する任務に付いていた米軍のキンリー曹長(ジェイク・ギレンホール)。彼の部隊に通訳として雇われていたアフガン人アーメッド(ダール・サリム)。
ある日情報を得て向かった先で部隊は襲撃され絶体絶命のピンチに。キンリーは大怪我を追う。だが通訳のアーメッドはそんな彼を見捨てず危険を犯し救出する。
恩義に感じたキンリーが今度は自らの危険を顧みず、アーメッドを救おうと奮闘する。
2人の演技はよいし、シナリオも分かりやすい。感動する作品に仕上がっている。つまり、映画としてはまずまず、よくできてる。楽しめる作品だ。
でも拭えない違和感。それはこれを美談にしていいのかという気持ちである。
米軍に雇われる現地人通訳には、報酬として米国への移住ビザが支給された。よって自国の不安定な政情に未来を憂い、移住を夢見た多くのアフガニスタン人が通訳になったという。
しかし、米軍に雇われるということは、いわば仲間に背を向ける行為である。非常にリスクある選択だ。
そんな現地の人々の米軍撤退後の現状。これを想像すると、しみじみやるせない。いや、怒りを禁じ得ない。
そしてもうひとつ。憎しみという感情に対する大いなる疑問がある。
もちろん、わかってる。
古今東西、歴史を紐解いても、シェークスピアなどの古典でも、人は憎しみあい殺し合ってきた。
でも、なぜ人はこんなにも憎み合い復讐しあうのか。小学生並みの発言で恐縮だが、本当に理解できない。
愛も憎しみも過剰な感情という意味で同じだ。そしてテロや戦争を見てもわかるように、憎しみの裏には愛国心などの愛が見え隠れしてる。
過剰な愛は過剰な憎しみにも化ける。
だから、愛は苦手だ。
そんな思いを噛み締めた本作。しかし映画としての出来はよい。