見出し画像

映画感想文「イージー・ライダー」55年前公開の名作の普遍的メッセージに衝撃を受ける

色褪せないメッセージに衝撃を受けた。

1969年米国で公開された本作。なんと55年前の作品である。リバイバル上映に行ってきて初めて視聴。

アメリカンニューシネマと評される本作。確かにめちゃくちゃメッセージ性強く、衝撃的な作品だった。これは後世に語り継がれるはずだと納得。

長髪にヒッピーみたいな格好をした若者ふたり(デニス・ホッパー、ピーター・フォンダ)が、バイクでアメリカ大陸横断の旅をする。ロサンゼルスからニューオリンズまでの長旅だ。

彼らのロードムービーは一見穏やかで自由の香りに満ちている。若さの勢いもあり楽しげな風景だ。

ところか、である。都市から遠ざかるにつれ、次第に幾度もの偏見にあい、保守的な人々からの強い憎しみに遭遇する。何の悪気もない若者たちが攻撃されるのだ。その光景は胸が抉られる。

ビートルズ誕生と同時期である。長髪=不良、ヒッピー=怪しい人たち、というのが世論であった。

おまけに、ロサンゼルスなどの大都市は新しいものに対する受け入れ耐性が多少はあったろうが、地方都市は全く異なっただろう。

そして何より「アメリカは自由な国と謳っているが、いざ目の前に自由な人が登場すると憎悪を受ける」みたいなセリフ。旅の途中で出会った若者(ジャック・ニコルソン)が彼ら2人に語るのだが、さもありなん、そういうことだよね、である。

だから結局はトランプが大統領に選ばれるんだと思うし、更に当時は今よりもっと大都市と地方の格差があっただろうから、彼らが旅する当時の地方都市の保守性の酷さは相当であったろう。

(なお、このセリフは現代の社会、会社やあらゆる組織にも当てはまる普遍性に満ちてる名セリフであると感心した)

しかも、その憎悪がいわゆる市井の人々(どこにでもいる善良な普通の人々)からぶつけられるから、心底恐ろしい。まるで、今どきのSNSで起きている事件と同じだ。普通の人が悪気なく他人を中傷し時には死に追いやってしまう。現代のそれととっても類似しているのだ。

人間の本質(結局は保守的)は変わらないのだと悲しくなる。ならば、それは自分だって同じなんだろう。

だからこそ、戦慄する。

自ら胸に手を当てて問いかけたくなる。こんな風に悪気ない若者を、いや若者ではなくても何らかの新しいことを、自らの保守性で無意識に潰してないか。誰かを追いやってしまってはいないかと。

55年後にも通用するこのメッセージ。これを監督&脚本&主演した、デニス・ホッパーの才能が本当に素晴らしい。天才かよ、である。

そして衝撃の二つめ。後世を知る俳優3人が、みんな若くて魅力的なことに驚いた。ピーター・フォンダがいわゆるいい人キャラの設定で好感持てる上に、ひたすらカッコいい(美青年というよりスタイル良く雰囲気ハンサム系)。また個性的な俳優としか思ってなかったジャック・ニコルソンも若き頃は美男子であることを、知る。

若さってやっぱり凄い。普遍的なメッセージとは対極にある、老年期を知ってる俳優たちの55年前との変化にも衝撃を受けた。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集