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映画感想文「花嫁はどこへ?」あり得ない花嫁取り違えが笑って泣ける、踊らないインド映画

いやいや、さすがにそれ、ないだろ。

20年前のインドを舞台にした花嫁取り違え。観終わったいまは、ありだわ、と思う。

そんなインドの結婚式のしきたりや風習、庶民の生活が丁寧に描かれており興味深い。笑えてしんみりして最後に気持ちよくなれる、踊らないインド映画。

大安吉日に結婚したプールとジャヤ。それぞれ花婿の家へ向かう途中で入れ替わってしまう。

夫とはぐれてパニックになるプール。しかし夫の村の地名も場所もわからない。迷子の子供と同じで途方に暮れる。だが降り立った駅でたまたま出会った善意の人たちに助けられる。それぞれ事情を抱える彼ら。プールとのやりとりを通じそれを引き出すことで、インドのいまが見える。

更に、違う家にたどり着いたのにやけに落ち着いているジャヤ。聡明で自立した彼女は何か企んでいる様子。こちらも彼女が取る行動、それに対する周囲の反応で、インドに住む女性の生き辛さが浮き彫りにされる。

何しろ気持ちいいのは、どの生き方も否定しない描き方。そもそもプールもジャヤも全くタイプが異なる。更に彼女らが出会う女性たちもそれぞれだ。

夫に尽くし婚家に尽くす人生、自立して自分で稼ぐ人生、どちらも良し。どちらにも幸せがある。

そんな描き方が素敵だ。

更に、はぐれてしまった彼女たちがそれぞれの思いがけない場所で自分を見つけていくところ。どんな不幸も偶然も跳ね返せる人の生きる力。それがあればどこでも幸せになれるんだというメッセージ。そんな語りに観終わったあと幸せな気持ちになる。

自然豊かで人情豊か、家族は団結。そんなインドの素晴らしさ。家に縛られ、女性が生きづらく農村では学問も行き届いていない。そんなインドの不の部分。両方を描きつつ、最後は多幸感に溢れる快作である。

ハリウッドがリメイクしそうな巧みなストーリー。インド映画アレルギーの人にも観てほしいおすすめ作品だ。

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