映画感想文「ナミビアの砂漠」渇いた21歳を演じる河合優実を堪能。これが若いってことだ
なぜ、あれほどまでに渇いていたのか。
若い。女である。
ただそれだけで、周囲はチヤホヤしてくれた。しかしそれ故に嫌悪感でいっぱい。馬鹿にするんじゃないよと内心舌打ちをして、ちょっとしたことでもすぐ、イラついた。
河合優実の美貌とスタイルを持たない、似ても似つかない私でさえ、そうだったのだ。根拠のない無敵感とあてどない覚束なさが同居してた21歳の時。不安定だったあの頃。
だから河合優実演じるカナの刹那的で支離滅裂な言動がわかる。
いや、正確には、わかるけど無性に恥ずかしかった。
なんだかなー。なんでそんな言動するかな、の数々。もちろん、いかにもありそうなリアル感に溢れてるんだけど。そして演者の力量もありすごく説得力あるんだけど。
それでもだいぶ大人になった今見ると、かなりこそばゆい。
今ならわかる。結局は何者でもない自分に対する怒りからくる言動なのだと。彼氏のせいでも時代のせいでもない。
彼女をめぐる対照的な2人の男が彼氏として登場する。
1人目の男ホンダ(寛一郎)。不動産会社勤務のサラリーマン。同棲中のカナに料理も洗濯もしてくれる。酔い潰れたカナを介抱する。何をしても怒らない。優しいけど物足りない。
2人目の男ハヤシ(金子大地)。育ちのいい坊ちゃんで映像クリエイター。感情をぶつけてくるカナに怒鳴り返したりする。カナはいつも彼に突っ掛かり喧嘩ばかりしてる。
寛一郎は男っぽい役、金子大地は優男な役、が多いイメージ。だから逆で、意表を突かれる配役であった。
脇役が豪華。中島歩、唐田エリカ、新谷ゆづみ。いずれも一瞬の登場だが印象に残る。
そして非常に楽しめた本作。であるが、老婆心ながらカナの将来がとても心配になった。いらぬ説教をしたくなる。そんな私は歳をとったってことだよなと、ひとり苦笑した。
21歳だからこそ許される生き様を堪能できる作品。そして河合優実はやっぱり凄い女優さんだ。