映画感想文「銀河鉄道の父」家族との関係に焦点を当て宮澤賢治を語る
誰か応援してくれる人がいて、才能は世に出る。
生前の出版は、2冊。37歳で没後、父や弟の尽力で世に知られるようになった宮澤賢治(菅田将暉が飄々と演じる)。
そんな彼の父(役所広司)に焦点を当てた直木賞受賞の原作の映画化。
明治29年、岩手県花巻市にて。質屋を営み地元の名士である、商才に長けた父の下に生まれる。
だからこそ、その豊かな生い立ちから来る罪悪感から、生涯を通じ農民の暮らしに心を痛め、試行錯誤した。
長男である賢治を溺愛した父、放蕩息子である兄の代わりに家業を継いだ弟。そして、兄の創作意欲を掻き立て、励まし続けた利発な妹(森七菜)。
誰一人欠けても今の宮沢賢治はあり得なかったろう。
才能の開花には多くの人の支えがあることをしみじみ噛み締める。
出番は少ないが、坂井真紀がとてもよい。最近母役で他にも沢山の映画に出ているが、どれもよい。生活感を滲ませながらも清潔感があり上品な色気を醸し出す「主人公の母」が定番になりつつある。
2時間のなかに父、母、妹、祖父と。多くの人を詰め込んだため、焦点が若干ぼやけてしまった感は否めず、そこが残念。
夜空や田畑など、何気ない田園風景の描写が美しく印象に残る。