映画感想文「ラストマイル」豪華俳優陣の出演でエンタメ満たしつつ、正解なきを問う社会派ドラマ
同僚が病を患い、手術した。
去年のことだという。
何度かオンラインミーティングをした。フロアで見かけたこともあった。
それなのに、知ったのは昨日だった。「言おうと思ったんだけど、いつも忙しそうだったから」と謝られた。
絶句した。
私はいったい何をしているのか。いちばん大切な時に何も出来なかった。そんな矢先、この作品は心に深く突き刺さった。
巨大流通倉庫のセンター長として赴任したエレナ(満島ひかり)。関東全域への配送を請け負う流通拠点には、派遣社員が700人、社員は6人。
稼ぎ時のブラックフライデーにその事件は起きる。この配送センターから送られた荷物が爆発し、死傷者が出たのだ。
責任を問われ、同僚のコウ(岡田将生)とふたり、なんとか乗り切ろうと奮闘するエレナ。しかし次の爆発が起こってしまう。
いったい犯人は誰なのか。
ベルトコンベアーが止まれば配送ができず目標は未達になる。日本の責任者イガラシ(ディーン・フジオカ)は米国本国から責任を問われ、エレナを詰めまくる。
エレナはどう解決するのか。
TBSドラマ「アンナチュラル」から不自然死の解剖医石原さとみ、井浦新、窪田正孝、大倉孝二が出演。更に同じくTBSドラマ「MI U404」からも警視庁刑事部の第四機動捜査隊の星野源、綾野剛、麻生久美子、酒匂芳らが、いずれもドラマの役柄のまま登場。
どちらのドラマも未視聴だが、問題なくストーリーにはついていけた(ただ、知ってた方がより楽しめるとは思う)。
本作は同ドラマの監督塚原あゆ子、脚本家野木亜紀子、プロデューサー新井順子の3人が手がけた映画である。
よくある紋切り型の糾弾ではない。安易に正解を導くでもない。ひとりひとりに静かに問う、非常に奥深い社会派ドラマである。
「ラストマイル」の意味を噛み締める。たぶんもう一度みる。豪華俳優陣の出演でエンターテインメントも充分に満たしつつ問題提起する、秀逸な作品である。