映画感想文「八犬伝」物語を回す北斎役の内野聖陽が素晴らしい。粗筋わかるが楽しめる名作
かなり面白かった。
ご存知、里見八犬伝。
あらすじ知ってるしなーと期待してなかった。なのに、結局最後まで圧倒された。
江戸時代の作家である滝沢馬琴を演じた役所広司も素晴らしいが、何しろ要所要所で登場する、馬琴の友の葛飾北斎(内野聖陽)が凄い存在感。彼に物語を回させる脚本が良い。
改めてベテランの凄みを感じた。
しかしほんとに、内野聖陽、うますぎる。テレビドラマ「JIN-仁(2009年)」の坂本龍馬役、「とんび(2013年)」の父親役、「きのう何食べた?(2019年)」の矢吹賢二役。役の幅が広いし、何を演じても人たらしになるのがすごい。この人の演じる人はいずれも魅力的になる。どうやったらこんなに人を魅了できるのか。
更に馬琴の悪妻に寺島しのぶ、息子に磯村勇斗。その妻は黒木華。脇を固める布陣も芸達者揃いである。彼らの安定感ある演技により、安心してゆったり視聴できた。
そしてこれ誰なの?とずっと名前が浮かばずモヤモヤしていた、悪霊役の玉梓(栗山千明)。ラストでやっとわかった。いやー、敵役。この人しか演じられない怪しさと美しさ、おどろおどろしさで圧倒された。天晴れ。
しかし、28年かけ、最後は失明する中、嫁(黒木華)に代筆させ、完成させた八犬伝。シンプルでいながら正義が勝つという王道ストーリー。やはりこのストーリーも魅力的なのである。これを馬琴と北斎が語る形式で小説に仕上げた作家山田風太郎が凄い。
長尺にも関わらず、ワクワクしながら次の展開を見守り、気がついたらエンドロールになっていた。おすすめ。