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映画感想文「満ち足りた家族」恵まれたふた家族の闇を描く韓国映画、いずれも他人事ではない
血の繋がりに忌まわしさを感じる人間だ。
だからそれを赤裸々に見せつけるこの韓国映画にため息が漏れた。でも嫌悪感というより、あー、やっぱりそうなるか、呆れましたと、一線引く感じ。何しろ驚くくらいに感情的で醜悪なくらいにエゴ剥き出しだから。
親子や兄弟の愛情って一見美しいけど、利己的で時に醜悪なものにもなる。
生物として人間に組み込まれたDNAレベルの仕組みとして理性を超えて存在してるのだろうとは頭では思う。それでも全肯定したくない理想論が自分の中にある。
兄は弁護士、弟は医者。
金儲けに目がなくお金さえ積めばどんな者も弁護する兄。高級マンションに住み贅沢な暮らしをしている。
一方弟は、お金がなくとも病にかかった人を助けようとする人情派である。そうはいっても医者なんである程度お金を持っているし、両家ともにお手伝いさんがいる豊かな暮らしである。
このお互いに違う価値観を持つ兄弟。社会的に成功したエリート一家のふた家族に起きるある事件をめぐる物語である。
それぞれ事件に対する反応は異なる。
これを見て、自分ならどうするかと問いかける。兄派か弟派か。はたまたどちらも否定するのか。こういう時に自分の価値観がわかる。
それにしても思うのは、韓国映画のステレオタイプな人間分類について、である。金持ちイコール心が汚れてる。美しいイコール利己的。みたいな、ステレオタイプに決めつけるような作品が多いように感じるのは気のせいだろうか。
その方程式が強固すぎて闇を感じる。
一方で曖昧にせず色分けする明白さが韓国映画の良いところでもある。だからベタだけど明快で見やすくもある。
尚、本作ではエンドロールが流れる頃には方程式を見失う作りになっている。価値観が揺らぐ。それを楽しむ映画である。
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