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映画感想文「君は行く先を知らない」イランの今がわかる、ある一家のロードムービー

ある家族のロードムービー。

運転は成人した長男。歳の離れた幼子の次男に、父母が乗っている。

乾燥した荒涼とした大地。剥き出しの地層。緑溢れる山脈。優雅に流れる広大な河。

雄大な自然のイランの大地を延々とドライブは続く。

無邪気な次男は非日常に高揚し、大人たちにいたずらを仕掛けたり、行く先々ではしゃぎまくっている。

そんな次男にも観客にも行先は告げられない。

だが大人たちの緊張から、何か大切なことが行なわれようとしていることが段々と伝わっていく。

それでも深刻さの傍らに、家族の他愛もないやり取りは続き、その中には些細な親子喧嘩や夫婦喧嘩もある。きっといつもの彼らはこうなんだろうと思わせる日常が垣間見える。

そんな日常のやり取りの滑稽さと、その中に見え隠れする悲壮感の同居が、おかしく切ない。悲劇の中にも笑いが存在することがリアルで、より胸に迫る。

特に、よく日本でもあるような、母親と長男のやり取りが「あるある」で笑えたし切なかった。

パナー・パナヒ監督は大学で映画制作を学び、映画監督の父親のもとで修行。本作が長編デビュー作となる。

実態の悲惨さはさておき。このような政治批判めいた作品が作れるということはそれはそれで救いはあるのではないか、と勝手ながら微かな希望を感じた。

イランの今、がわかる映画でおすすめ。

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