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映画感想文「雲の向こう、約束の場所」切ない、ともかく切ない。新海誠監督の20年前の作品
切ない、ともかく切ない。
新海誠監督の長編2作目アニメ映画。20年前の作品だが、リバイバル上映の映画館で視聴。作りの粗さはあるものの、それを上回る瑞々しさが迸る。そして空や風景を描く画がとても美しい。
少年が主人公。夢や憧れ、初恋、子供から大人になる痛み。それらを扱ってる点が、後の作品と共通してる。一貫してこれらが新海監督のテーマであるのだろう。
戦後、北海道と本州に分断された日本。まるで韓国と北朝鮮のように、行き来は許されない。
封鎖された北海道(蝦夷と呼ばれる)の対岸、青森に住む中学生ヒロキとタクヤ。
まだ見ぬ世界である海の向こうにそびえ立つ謎のタワーに憧れを抱いている。幼い頃からずっとそこにある。いつか自分たちで作った飛行機で、そのタワーまで飛ぶ。それが彼らの夢だった。
そんな彼らの放課後にいつしか合流する、同級生のサユリ。彼女も彼らと同じ夢をみるようになる。
きな臭い軍事政権。背景にはそんな描写が見え隠れする。でもそんなことには全く気付かずスルーし、友情を育み、初恋を味わう彼ら。子供の身勝手さ、半径何メートルかしか見えない視野の狭さ。
そんな彼らがある試練で岐路に立たされる。様々な選択を迫られるヒロキとタクヤ。彼らは何を選択するのか。
なんといってもヒロキを演じる吉岡秀隆の声が良い。朴訥とした自信なげで時々しゃがれる声。今更だけど、なんて魅力的なんだろう。少年から青年に脱皮する成長過程で葛藤する主人公、にぴったりだ。この役に、プロの声優ではなく彼を選んだことが素晴らしい。
時折突拍子もないところもあるストーリーではある。それでも、個人的には甘酸っぱく苦味さえ混じるラストがとても好きだ。
切ない、最後まで終始一貫して切ない。新海監督、やっぱり天才である。