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映画感想文「ぼくは君たちを憎まないことにした」知性と感情の葛藤が人間だ

許すことなんて、できない。

でも、憎めばまた、次の憎しみの連鎖をうむだけ。

こう思えることが、知性だ。

しかし、感情が邪魔をする。

誰かの無差別な憎しみのせいで愛する人が犠牲になる。それを感情は消化できない。

当然だろう。

それが普通だ。

でも、そこで葛藤する。それこそが人間の持つ、矛盾であり、素晴らしさだと思う。

妻と1歳半の息子と幸せな人生を送っていたジャーナリストが、2015年にパリで発生した同時多発テロで妻を失う。

その悲しみは、想像を超える喪失感だ。

そして、突然襲うワンオペ育児とまだ死を理解できない幼い息子からの「ママはどこ?」の質問攻め。

辛すぎる。

それでも彼はSNSに犯人を憎まないことを宣言する投稿を行う。

憎しみの連鎖はまた次の悲しみを生むことを身をもって知ったから。愛する息子をその連鎖に巻き込まないと決めたから。

でも、行き場を失った怒りから、壁を殴りつけ、ひとり眠れぬ夜に涙し、泣き叫ぶ。

それでも憎まないと宣言し続ける。

悲しみもさることながら、向き合おうとする覚悟、葛藤に涙した。

もっといい映画にできた余地はあった気もするが、葛藤を描く良き映画。

そして、子役の演技の凄さが作品を格上げ。行く末恐ろしい、たった1歳半の天才子役登場である。これだけでも観る価値ありの凄さ。

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