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映画感想文「幼な子のためのパヴァーヌ」マレーシアの赤ちゃんポストを巡る女性たちの物語

前にもこんな議論があったよね。

記憶が呼び覚まされた。

中絶が認められていない国、マレーシアを舞台に、赤ちゃんポストで働くソーシャルワーカーの女性の物語。いまだ家父長制が残るマレーシア。自分の身体なのに女性に選択権はない。レイプなどの望まぬ妊娠であっても産むことが要求される。

そんな社会で赤ちゃんポストを運営しているのだ。団体のホームページには非難のコメントが書き連ねられ、世間からのバッシングの嵐である。

だいぶ前に日本でも同じような議論があったと思いググったら、そんなに遠い昔でもなかった。2007年、日本初の赤ちゃんポストは熊本県で生まれた。

その是非を巡る議論が、マスコミを賑わしていたことをよく覚えている。育てることは親の義務。子供を捨てることを増長するのか。というような議論だった。

当時、そんなことをいう人が沢山いることに驚いた。余裕のある人がいうセリフだなと思った。

切羽詰まった人の選択肢である。捨てたくて捨てるわけではなかろう。それに、赤ちゃんポストという選択肢がなければもっと悲惨なことを選択せざるを得ない人もいるだろう。

消極的な、でも必要な選択肢だと思った。

そして、ニュースでこの手の報道がなされる時の違和感。責められるのはいつも母親であり、どこかで見知らぬ顔の父親が存在していること。それに毎度憤りを覚える。

本作でもそれは同じであった。

それでもこの作品は切羽詰まった女性たちが手を取り合い助け合うという未来が示されている。

終始真摯な表情で人生に立ち向かう主演のフィッシュ・リウの抑えた演技が光る。そんな彼女が感情を爆発させる場面はこちらも号泣しそうに心が震えた。

またマレー系民族が多数を占め、中華系、インド系も暮らす他民族のマレーシアらしく、それぞれの民族の風習や文化も織り込まれ、見応えあった。

日比谷で開催中の東京国際映画祭で視聴。上映の後、チャン・ジーアン監督、主演のフィッシュ・リウが登壇。会場の質問に答える形で作品への想いを語ってくれた。ある程度仕込みの質問かもしれないがそれでもこんな形で製作者の思いが聞ける場は映画好きにはたまらなく、嬉しい。

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