映画感想文「まる」現代美術へのブラックで的確な風刺が笑えてしんみり。堂本剛のフィットぶりが凄い
アイドル映画と思った自分を恥じた。
堂本剛27年ぶりの映画。というキャッチフレーズ。ちょっと躊躇ったが、みて正解。風刺が効いててなかなかよかった。
全くノーマークだった、堂本剛。独特の存在感あり、やはり長年売れているアイドルは凄いなと思った。
個人的には2001年までやってたテレビ番組「LOVE LOVE愛してる」が印象深い。相方の堂本光一が器用で場を読む世渡り上手なため、その対比として余計に感じる。当時からある種のオタク、自分の中に閉じこもるアーティスト性みたいなもの。その彼の個性がこの映画の主人公の沢田役にぴったりだった。
美大をでて現代美術家(吉田鋼太郎)のアシスタントをしている沢田。アートへの夢は忘れ去られ、安月給でこき使われる日々。それに疑問も感じず淡々と毎日を送っていた。
しかしそんなある日の雨の日の自転車通勤。事故にあい大切な腕を骨折してしまう。
働けなくなった彼は家に帰り、ひとり無心に丸を描く。ただの丸だが、それがあっという間に評判を呼び、社会現象になっていく。そして知らぬ間に沢田は現代美術家として名を馳せていく。
沢田を取り巻く配役がよい。バイト先のコンビニの同僚のミャンマー人を演じる森崎ウィン。社会的に立場は高くない普通の人だが、誠実で真っ当な人間。その言動はいつも沢田を元気付け、励ます。いそうでいない。こんな人になりたいものだ。とても魅力的だった。
またアパートの隣に住む漫画家志望の横山(綾野剛)。全く芽が出ず心が折れそうな情緒不安定男を嬉々として演じている。綾野剛、こういう役がほんとにうまい。
そして、美術愛好家の土屋を演じる早乙女太一。胡散臭さが際立ち、目を引く。うわー、こういう人いそうだ。彼もこういう役で耀く俳優さんである。
現代アートへの皮肉が詰まった作品で笑える。そしてちょっぴりおセンチな気持ちになる。
堂本剛にあてがきされたような主演の配役。更に脇を芸達者たちが囲む。という、なかなか見応えある作品であった。監督は荻上直子。通りで癖のある作品なはずだ。