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映画感想文「野生の島のロズ」危機的状況に置かれたロボットが自ら役割を見出し感情を学ぶ物語
まるで、センスメイキングだ。
嵐で船が難波。無人島に投げ出された高性能ロボットロズが、親なし子になってしまった雛鳥を育て様々な感情を学んでいくというストーリー。
前提としてロボットには感情がない。そして自らの思いはなく、単に命令に従う。
ロズは依頼主からの仕事をやり遂げることがプログラミングされている。しかし無人島にはロズに指示してくれる依頼主はいない。
ひとりぼっちの無人島という危機的な状況。依頼主がいないという自らのアイデンティティを見失いそうな環境。そこで、ロズは雛鳥を渡り鳥として旅立てるよう立派に育てるという役割を見出していく。
米国の組織心理学者カール・ワイクの提唱する「センスメイキング理論」。予期せぬ状況で、目の前の現象に対し自ら意味付けしていくこと。
本作で頭に浮かんだのは、ずっと前に学んだこの理論である。
人工ロボットのロズは雛鳥を育てる親となることで、愛を学び他の動物たちとの共存も身につけていく。とってもヒューマンである。なんなら途中で親子愛に涙が溢れそうになった。とっても素敵な話なのである。
人間ができることはロボットもできるのだ。そう考えると、センスメイキングが人間だけの専売特許ではないとは思う。そして、ロボットに感情があるというのは明るい未来にも思える。
それでも「ターミネーター(1985年公開、アーノルド・シュワルツェネガー主演)」で育った身には、そんな未来にちょっと薄寒さも覚えた。どうしたって、感情を持つロボットは「審判の日」を呼び起こすのではないかと怯えてしまう。
やがて訪れるであろうロボットが感情を持つ世界を歓迎できかねる気持ちが水を差したが、アニメーションはリアルで躍動感に溢れてる。キャラクター達も魅力的だ。
大人も考えさせられる作品。親子で楽しめる良作である。