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映画感想文「オークション 盗まれたエゴン・シーレ」フランス人観察が興味深い映画
人間観察的に面白かった、フランス映画。
郊外の工業都市ミュルーズ。そこに住む化学工場で、働く労働者の青年マルタン。彼の家に飾ってあった絵画が、まさかのエゴン・シーレ作品であった。
という物語。あり得ない設定が興味深いが、それより面白いのは本作に出てくる人々。一様にみな、自己主張強く、自分勝手で個性的だ。
夜間勤務の労働者のマルタンは貧しい純朴な青年で、友人たちとのカードゲームやダーツが唯一の楽しみ。友人たちもみな工場勤務。イライラするとすぐに取っ組み合いの喧嘩。そして仲直りにタバコをふかす。
一方絵画を買い取るパリの競売人アンドレは車と時計のコレクションに明け暮れ、スーツはすべてオーダーメイドの洒落者。口がうまくオークションで勝つことがすべてだと思ってる。そこに競売人の同僚、色っぽくて自立した元妻も絡み、人間模様が繰り広げられる。
都会に住む余裕ある人々、郊外の純朴な労働者、それぞれの暮らしや諍いを興味深く見せ、引き込まれる。
ただし、いくつかの伏線は回収されないまま。もやもやするが、そこがまた放置プレイのフランス映画の特長か。
なかなか興味深かった。
91分の本作。全てのピースが丸く収まる始末の良さを気にする日本人としては、あと20分長くしてもう少し人間模様を補足して欲しかった。