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映画感想文「ホワイトバード はじまりのワンダー」戦時下のフランス。若者たちがどう生き抜いたのかの物語

こういうのに、もれなく弱い。

戦争、人種差別、いじめ、虐げられた者たちの団結。そして苦境でこそ試される崇高な魂。

全部てんこ盛りの作品。

胸が詰まらずにいられない。しかし若干の満腹感も残る。

第二次世界大戦下のフランス。ナチスドイツの台頭。子供達の学校にもその影は忍び寄る。ユダヤ人が次々と強制収容所に送られていった。

幼い頃から何百回もの問い。そんなことがどうして起こってしまったのだろう。まるでドラマの世界のような、現実感のなさ。

誰かが止められなかったのかとほぞを噛む。でも現実に人類が手を下した事実なのだ。

あとからはいくらでも言えるから。自分だって同時代を生きてたらわからない。

更に、現代においても違う形で後世に「信じられない」と呟かれることが起きているのだろう。人間はいつの時代も愚かなのか。

なんだか悔しい。

物語のスタートは、現代のフランス。恵まれた家庭の息子ジュリアン。私立高校を退学になり、別の高校に転校する。しかしそこでも斜に構えて友人ができない。

スクールカースト上位のイケてる友達の輪にも入れず、かといって窓際のイケてない地味な生徒とはやって仲良くしたくない。本当にしょうもない若者、ジュリアン。

そもそも前の学校を退学になったのも、彼のいじめが原因であった。

そんな彼を見かねて祖母であるサラが封印してきた自らの生い立ちを語り始める。という切り出しで物語はスタートする。

ジュリアンがあんまり共感できるキャラではない。が等身大で、確かに、どこかにいそうだな、というリアルさで良い。また祖母役のレヘン・ミレン。さすがの安定感ある演技で引き込まれる。

また若きサラ役と相手役のこれまたジュリアン。この2人の非常事態下での緊迫感あふれる美しさが印象に残る。映画には重厚感とフレッシュさが共に必要なことを悟る。

ちなみにタイトルにもあるもう一つの映画「ワンダー」とはほとんど関係なかった。

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