
映画感想文「プリシラ」良くも悪くもソフィア・コッポラ、プレスリーに翻弄された14歳の少女の物語
ソフィア・コッポラらしい、あっさりテイスト。
過去作品と異なり主人公はまだ存命中。ということも起因しているのか、少し綺麗事すぎる感じでストーリーは流れる。愛憎のどろどろ感なし。それに、ちょっと肩透かしを喰らう。
しかし、よくよく考えてみれば、衣装や小道具のポップでカラフルな華やかさ、砂糖菓子のようなくどすぎる位の甘さ。それらが彼女の作風だが、その見た目のこってりさに比べ、情緒面の描き方は驚くくらいに淡白である、がそもそもソフィア・コッポラの持ち味であった。
なので、定石通りか。
ということで、この作品は期待に比べてやや物足りなかった。というわけだが、良かった点は二つある。
まず、徹底的にプリシラ目線である、その描き方。プレスリー視点のストーリーは多いが、いままで妻目線での物語はなかった。だが、たった14歳で出会ったスーパースターに翻弄された少女の人生、というテーマは相当に興味深い。確かに映画の題材にぴったりだ。
二つ目は、演じたケイリー・スビーニーの演技力。主演のためほとんど出突っ張りの熱演。
最初はあどけない中学生。それが恋をしてだんだん女になっていく。更に結婚して子供を産んで、さまざまな人生経験を経て、だんだん変わっていく。そして成長してエルビスからの卒業。それらの繊細な心の機微を全身で表す演技力はなかなかのものだ。今後が期待できる女優である。