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うのの さあら
2021年9月17日 23:30
よく冷えたわらび餅屋台の灯りも煌々と照らし出されたむじなの素顔上がった花火の落ちた先焼け爛れていく捻れた妬みラムネで割って林檎飴と蜜と瓶底に残る世紀末の輪唱鼻緒で擦れた指の間に永遠の契りも雲散霧消と相成り候粋に鳴くやら背中の芋虫 #あたおか散文
くるりと回った回転扉の向こうにいたのはマゼラン海峡で落とした胸骨のかけら禍々しい夜の帷でよくもまたここまで来たねと労いの 歌もホロロと由比ヶ浜セメントを食べる蝸牛君の袖にはよく似合う廃品回収のトラックに乗った黄色の長靴みよちゃん探して霧の中 #あたおか散文
鯉がついばむ唇を恋の後先と言うのなら故意に落としたガラスの靴を声の限りに呼んでみしょうやい、そこな女郎下帯に隠した路銀 燗冷まし萎えて消えれば蚕の夢よ香具師の売り声高らかに目病み女の競り落としおちょこ三杯夜露に甘塩 #あたおか散文
木のうろにあなたが手をのべて触れたもの忌々しく滑らかで、甘く絡みつく、香り高く沈み込むように、妖しく息苦しいそれを求めてザラザラとした虫達がひしめきあうあなたの柔らかく赤い頬が少しずつ毟り取られていく様を私は恍惚として飲み込む気狂いじみた太陽と共に #あたおか散文
えぇ、そうそうその役場の右脇をおりてってあぁ、その金物屋の手前を降りてね裏の畑あの娘の亡骸があるやぁ、風向きの良い日でよかった鳥がよく集まるからね掌の後悔と右脇腹あたりに溜まった憤りなんてのは良い肥しだあなたも妙な顔してないで召し上がってらっしゃい #あたおか散文
津軽の林檎を食んだ貝殻の味はあなたのお口にあったでしょうか海なりの声高くとうの昔に消え去った音2度とは口から漏れぬ音陽の刺さぬ海岸に落ちたチンケな店の錆びたライター砂粒が埋めていく記憶という名の猥雑な猟奇ところで見つかりましたかその腰巻きの持ち主 #あたおか散文
2021年9月10日 23:30
どろどろに溶けた羞恥心爪の間に詰まった泥よせんない事よと嘆きの溜息先頭に立った兵隊の奇声下がらない熱おだてる魚短い帯をきつく結んで足りない頭を祭壇に飾るあぁドラスティックに輝いて君の足元にひれ伏した真っ赤な真実の行方さもありなんと女神が嘲ける #あたおか散文
君はだぁれレモン水に浮かべた鉛の渦君はだぁれ寝起きに見えた綿飴の欠片君はだぁれいつか火にくべたあの娘の靴下君はだぁれレースのハンカチに包まれた左胸の鼓動君はだぁれ夕立の中に立ち尽くす一匹の飯綱君はだぁれ足音だけになった過去の幻影私は、だぁれ #あたおか散文
つまらないグラスにありったけの怠惰を注ぎ込むラムネ菓子の様相を呈した昨夜の観世音菩薩が家出した涙の代わりにもう一杯太陽にかざしたビール瓶のかけら喉元に刺さるまであとひと眠りねんねんころりよおころりよ青くて丸い救世主風向きが変わればシーツも乾く #あたおか散文
螺旋を降りて一段ずつ聞いていたよないないよなあの子の涙の落ちる音締まりの悪い扉が軋むしとしと降ってガラガラ泣いて明日のお日様どこいった見えているのは昨日の残月みかちゃんのびいどろ玉は割れても光る紫色の掌の中 #あたおか散文
夕焼け小焼けで日が暮れてあいつの頬に紅葉の残骸燃やし燃やして残った消し炭くすぶったとて桃源郷煙の向こうにゃ猫の尻あってもなくてなくてもあってささくれがしみてしょぼくれて明日の天気を占ったコンバースの靴が宙に舞う #あたおか散文
橙色の面影に虚な眼をトッピング慎み深い女の手愚かで軽率な女の手どっちが柔らかくて暖かいどっちがしっとり甘い味右の手の欲しがるものを左の手に教えるな右の手の与えるものを左の手に口移し行ったり来たりで堂々巡りお腹空いたろさぁ指の端からお食べなさい #あたおか散文
何もない全てある何もある全てないどちらも同じことなのに萎えた足が向かう先桃源郷という名の地獄見つからなくて迷い子の泣き声響く月の夜あぁ、生ぬるい頬の水 #あたおか散文
2021年9月3日 23:30
古いレコードの針を落とせばあの頃の雨が降るあの時の仕草が褐色で再生されても私の掌には何もないつまんで捻れば芳しく檸檬の香りに溺れて消える回転数を落としても2度とは出会えない狂ってズレた段違いの夢幻別れの盃に紅添えて #あたおか散文