乳酸について(最近ランニングを始めたランナーさん向け)
先日、乳酸について、お話しをする機会がありましたので、簡単にまとめてみました。
乳酸って一般的にはあまり馴染みがないですが、
陸上競技やランニングを長くしているとトレーニング理論で良く出てくるワードなので、最近ランニングを始めました!って方に向けて書いてみました。
乳酸とは…
□乳酸とは…
「エネルギーを再利用するための形」
「酷使した筋肉を守ろうとする働き」
□乳酸が産生される条件は…
「糖質を無酸素的に分解したとき」
「筋細胞内に酸素が少ないとき」
エネルギーは、主に糖質と脂質から作られます。
糖質も脂質も分解を繰り返し、最終的にATPエネルギーになります。
□糖質からのエネルギー
「量が少ない・すぐ使える・主に瞬発系」
「細胞の中で作られる」
□脂質からのエネルギー
「量が多い・使うまで時間が掛かる・主に持久系」
「ミトコンドリアで作られる」
「糖質」を無酸素的(解糖系、嫌気的)に分解してATPエネルギーを作った際に、細胞の中にピルビン酸という物質が発生します。
(ピルビン酸とは糖質のカスです。言葉が悪いですが、ゴミみたいな感じです)
□無酸素的分解とは…
「酸素を使わず酵素等を使ってすぐエネルギーにする」
□有酸素的分解とは…
「酸素を使って時間を掛けてじっくりエネルギーにする」
糖質を無酸素的に分解して、ピルビン酸が発生したときに、細胞の中に酸素がたくさんある状態のときは、ピルビン酸は形を変えてミトコンドリアの中へ入り、またエネルギーとして再利用されます。
□ミトコンドリアとは…
細胞の中にあるエネルギーを産生する工場みたいなところです。有酸素運動をするとミトコンドリアと酸素と栄養を送る毛細血管が増えます。
細胞の中に酸素が少ない状態のときは、ピルビン酸は酵素反応により「乳酸」へ変わり、細胞の外へ出て、血流に乗って肝臓に行き、またエネルギーとして再利用されます。
(ピルビン酸のままだと細胞の外に出れないので、乳酸に変身します)
ただ、全ての乳酸が血流に乗るわけではありません。滞留してしまった乳酸が、その部位の筋量の0.3%蓄積すると筋肉は収縮不全になり、走っている最中に突然脚が重くなる、動きが鈍くなります。
ランナーさんなら、よく撃沈と表現されますね。
少し話しがそれますが、
運動時に酷使している筋肉の糖質を使用するので、他の部位の糖質は使用しないそうです。
例えば、ハムストリングス内の糖が枯渇したから「上腕二頭筋の糖を持ってきて使おう!」とはならないとのこと。
あと、飲食後、胃で分解、小腸で吸収しますが、その栄養を「ハムストリングスに全部送ろう♪」とはならず、基本的に全体的に満遍なく行き渡ります。
普段から適正な量の糖(炭水化物)を摂る。
運動する20〜30分前にも軽く何かで糖を摂ることが大事だと思います。
糖が枯渇した状態が続くと糖新生が起こります。タンパク質(筋肉や内臓の一部)を分解して糖を作る恐れがあり、とても健康的ではありません。
糖新生についても、いつか書きたいと思っております。
血中乳酸濃度
話し戻って、
上記で説明したピルビン酸が発生⇒乳酸へ変身⇒血流へ。
このときの血中の乳酸濃度が顕著に上昇するタイミングを乳酸性作業閾値(LT)。一般的には2mmol/L前後。
上昇して4mmol/Lに達した地点をオブラ(obla)と言います。
LTとoblaはランニングのトレーニングで良く聞きますね。
一般的な市民ランナーさんの間で使われているTペース(LTペース・閾値ペース)はobla付近のことを指します。
Tペースとは心地よいキツさで、
一般的なランナーさんでは、練習で20分、ピーキングを合わせて60分継続できるキツさ。とされております。
このTペースでの練習目的は、
乳酸が蓄積してから耐える練習ではなく、乳酸を処理(再利用)する能力を高めるためです。
よって、目標のペースで必死に練習するのではなく、その日に走れそうなペース、もしくは、乳酸の蓄積を感じたらペースを落とす、インターバルのような分割走にする、等が一般的です。
ただ、学生の時に部活等での競技経験がなく、市民ランナーとしてランニングを始めたばかりなら、先ずは、ゆっくりじっくり有酸素運動をしてエネルギー再生工場のミトコンドリアと酸素と栄養を送る毛細血管を増やすのが優先度が高いと思います。
(学生時代、中距離経験者ならスピード系から始めても良いと思います)
私がランニングを始めてからちょうど3年経ったころ。
私がランニングを始めてからちょうど3年経ったころに、
つくばマラソン公認10kmロードレースに参加しました。
その時の練習内容は、
昼ラン⇒3.6km(3分50-55秒/km)
夜ラン⇒6.0km(4分00秒/km)
週に4〜5日ほど練習。
知識がなかったのでジョグとスピード系の練習は全くと言っても良いほど、ほとんどしておりませんでした。
上記の練習で10kmを37分00秒でした。
(5kmに換算すると約17分50秒と同等の走力)
ちなみに、当時の愛用シューズは、本格的に練習をしていたわけでもないので、
練習用 ⇒ 2足で7500円のよくわからないシューズ
レース ⇒ ソーティマジックRP3
上記の経験上、あくまでも私の個人的な考えになりますが、
男性の市民ランナーで5000m(5km)の記録が17〜18分台までのランナーさんは、VО2max・無酸素系のトレーニングは必要だと思いますが、そこまで拘らなくても良いと思いますので、ジョグとLT強化がメインでも17分台までは走れると思います。
もし、収縮不全まで追い込んだら
先の説明で、部位の筋量の0.3%乳酸が蓄積すると収縮不全になると記載しましたが、これは酸素が枯渇している状態です。
VО2max・無酸素系のトレーニング時に脚の筋肉が収縮不全になるまで追い込んだ際は、ゴール後に立ち止まらずにウォーキングや軽くジョグをして速やかに筋肉に酸素を送り込むことで翌日の疲労の残り方が違うと思います。
また、5~10分程度のクールダウン後、軽くストレッチと筋肉を擦るだけでもだいぶ違うと思います。
(強めの圧す、揉む等は要らないです)
最初に乳酸は「酷使した筋肉を守るため」と記載しましたが、
筋細胞内に酸素が枯渇している状態で、一生懸命に運動したら筋肉の疲労、ダメージ大きいです。
ガソリンがないのにアクセルを踏み続けても走りません。エンジンが壊れてしまう恐れがあります。
そのため、乳酸が産生して、筋肉をこれ以上、酷使しないように収縮不全になり筋肉を守っております。
最後に
ひとりでも多くの市民ランナーが、ランニングを通じて人生が輝くことを願っております。
セラピストとして、微力ながらお手伝いできれば幸甚です。