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蒸し返される紀香の結婚
いつまでも忘れてあげなくて紀香には気の毒なんだけど(かえるちゃんはヘビ年だからしつこいのよ)、紀香と陣内の結婚式のテレビ中継はかえるちゃん全部ちゅーじゅく見ていたのさ。
末代まで祟るから芸能人は挙式中継なんかやらん方が良いよ。
紀香と陣内の結婚式はかえるちゃんが42歳の頃だから、18年も前のことです。
この頃、かえるちゃんは外で仕事したい病にかかって30件くらい面接受けて全部玉砕。
30歳の頃に3年くらい会社員やったきり自営業だから、スキルがあっても雇用はしてもらえないのよ。
健康状態もイマイチで、「万全です」とは言い切れなくて、最後に面接受けた会社が「内地なら仕事がありますよ」と言うもんだから、かえるちゃんは静岡のパナソニック携帯電話工場で期間工をすることになりました。
3ヶ月のことだからすべてを受け入れるつもりだったんですが、期間工はつらかったです。
一番つらかったのは労働時間で、午後3時〜午前3時とその逆のシフトを2日間ずつやってからの2休。
時には休日出勤もアリ。
次につらかったのは給料激安。
時給1,000円の契約で、労働時間もかなり長いのに、差し引き金額が多いうえに沖縄への仕送りもあったから、手元に残るお金は月に2万円とか。
かえるちゃんは期間工のこの時期が人生のどん底の貧乏でした。
貧乏過ぎてバナナしか買えませんでした。
まぁ、かえるちゃんが住んでいた街はゴミの分別が厳しくて、9種類の分別なんです。
ゴミを出す時間も朝8時半〜9時までで、間違ったゴミを持っていくと見張りの市民に怒られて返されるんです。
夜勤もあるからゴミ出しのスケジュールを把握して生活もできなくて、缶ビールなんてとんでもない。
バナナのゴミ出ししか分からなかったんです。
工場内のいじめもすごくて、かえるちゃんが履歴書にパソコンすごく使えるとアピールしたばかりに、ライン工程で組み立てられた携帯電話のユニットが通電するか確認するコンピューターの前の仕事の担当にされちゃったんです。
ライン工程は楽しそうにピーチクパーチクしながら作業をしているんですが、かえるちゃんのセクションでコンピューターが超ポンコツでしょっちゅう止まるんです。
自分でなんとかしようとしちゃいけなくて、止まったら即、ヤンキーの上の人を呼ぶんです。
ヤンキーがどうするか考えあぐねてる間にライン工程からあがってくるユニットは1000個とかまで溜まっちゃうんです。
誰もかえるちゃんに共感してくれなくて、なんなら敵意むき出しにされていました。
そんな四面楚歌の生活をしていたある日、仕事が休みだったので、会社借り上げアパートの近くにあるスーパーに行きました。
そのお店は輸入食材を多く扱っていて、他のスーパーよりおしゃれで少しお値段も高かったです。
お金がないのにそんなお店に行っても意味がなかったんですが、たまたまお菓子売り場にショートブレッドがあって、一箱600円だったんです。
別のスーパーでバナナを買えば300円以下なんですが、ショートブレッドが猛烈に食べたくて、買っていいか、あきらめるか小一時間悩んだ末に買って部屋に戻り、ふだんは見る時間もない部屋に備え付けのテレビを見たら、やってるんです。
紀香と陣内の豪華結婚式が。
郷ひろみまで出てきて「お嫁サンバ」を歌ってるし。
ショートブレッドと水道水で夕飯を取りながら最後まで見ちゃいました。
極貧生活は人をたくましくするけど、執念深くもしますね。