見出し画像

ミーツナイチヤーインニューデリー

もう30年くらい前のことなんですが、かえるちゃんはインドに3週間ほど行ってました。
よくわからないけど、バブルの頃でメインストリームを外そうとするとインドだったんです。

まぁ濃い3週間だったけど、大きなトラブルもなく帰宅できました。

インド滞在中、最後の3日間はニューデリーで過ごしたんですけど、もう駅に着いた段階でかえるちゃんは「ゆっくり休みたい」しか頭になくて、オートリクシャーに乗って「インペリアルホテル」って言ったんです。
ふつうインペリアルホテルならどこの都市にもあるよねと思ってました。

その頃のニューデリーのインペリアルホテルは近代的な高層ホテルではなくて、植民地風の低層階ホテルで、入り口ではターバンを巻いたイカついスィク教徒の男性がお出迎えでした。

エレベーターは手動で、やっぱりイカついスィク教徒の男性が動かしてくれました。
服装はスーツではなくて、美川憲一が着るような背中にタイガー背負っていそうな濃いテイストでした。

客室は英国風なしつらえで、小花模様の壁紙に浴槽は猫足とロマンティックでした。

電話も交換手がつないでくれて、国際電話で1時間待たされて心配になって交換台に電話したら「こちらは歴史と伝統のあるホテルなので安心してゆっくり待ちなさい」みたいなことを言われました。

インドで起こったことはまた機会があったら書きたいんですけれど、ニューデリーのインペリアルホテルはおそらく本当に格式の高いホテルだったと思います。
一泊150ドル以上でしたね。
500
ドルくらいのデポジットを取られて、チェックアウトの時に大量のルピー紙幣を持たされて半泣きになりました。
ルピー紙幣はホチキスでバチバチ留めてあって、宝くじの方が大切に扱われている印象でした。

食事はさすがにホテル内で食べたら危険と思ったから、ホテルの近所の食堂で食べていました。
ホテルはわりと街中にあって、歩いて行ける距離に当時は珍しかったスーパーマーケットや国営のお土産屋さんもありました。

夕飯のマトンビリヤニを黙々と食べていたら、「日本人ですか?」と声をかけられました。
振り向くとメガネをかけた丸顔の男性とマラソンの有森さんににた奥さんと赤ちゃんがニコニコしていました。

「どちらから来ましたが?」男性に聞かれて、沖縄ですと言うと、「僕、沖縄に住んでましたよ、コザ」と言われて、「私コザから来てるんです」と言ってから、しばらくゲート通り辺りの話をしました。
奥さんは無言で抱いている赤ちゃんをあやしていました。

奥さんが一言も言葉を発しないので、軽くなんでかなと思っていたら男性が説明してくれました。

「彼女はチベットからの難民で国籍がないんです。僕も彼女と結婚しているのでオーバーステイです。いつもは田舎にいますが、今回は妻の難民認定の書類を取るためニューデリーに来ました」とのことでした。

難民とか無国籍とかオーバーステイとかかえるちゃんの日常にないワードの連発でおとなしく聞いていましたが、食事が終わるまでその家族とは楽しくお話ししました。

少しその辺をプラプラしながらホテルに戻ると、「あ、さっきの」と声がして食堂で会った家族がニコニコしていました。
「あなたもお茶でも飲みに来ましたか?僕らもたまに来たニューデリーだからお茶を楽しみました」と言われて、フロントの職員さんはかえるちゃんのルームキーを持って待ち構えているので、仕方なく受け取りましたが、観光客の無神経さを表明しているようでとてもバツが悪かったです。

この男性にしたらコザんちゅの収入の相場も知ってるわけで、かえるちゃんがインペリアルホテルに泊まるようなタマではないと見透かされているようで、ここでは会いたくなかったです。

この家族とは連絡先を交換していないので今どうされているかわかりませんが、あの時の赤ちゃんももう30代くらいなんだろうなと考えると、国籍の問題は解決してほしいです。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集