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【刑事訴訟法論点研究】被疑者被告人の自殺の危険性は、罪証隠滅のおそれに該当するか?

今回はタイトル通り、被疑者被告人の自殺のおそれは、罪証隠滅のおそれに該当するか、を考えたい。

はじめに(問題の所在)

被疑者勾留(刑事訴訟法(以下略)207条1項本文、60条1項)、被告人勾留(60条1項)では、その要件として「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」(60条1項2号)というのが掲げられている。

これが今回問題となる、罪証隠滅のおそれ、だ。

すなわち今回の問題は、被疑者被告人が自殺する危険性がある場合に罪証隠滅のおそれの要件を満たすのかどうか、だ。

私見

以下、この論点に関する私見を述べたい。

私は、被疑者被告人の自殺の危険性は、罪証隠滅のおそれに該当しない、と考えるべきだと思う。

なぜなら、被疑者被告人自身は罪証には該当しないと考えるべきだからである。

被疑者被告人自身が罪証に該当するのであれば、60条1項3号の存在意義が無くなる。

被疑者被告人自身が罪証であると仮定した場合、2号は3号を包摂するものであると解釈する事となる。

しかし、わざわざ重複して2号と3号とに規定する意味が無いだろう。

したがって、被疑者被告人に自殺のおそれがあっても、罪証隠滅のおそれを肯定すべきではない。

反対の立場

ここで、私見に対する反対説を提示してみたい。

反対説1

まず、私見でも触れたが、敢えてそのように解釈するものだ。

つまり、2号は3号を包摂するものであると解釈し、3号はそれでも敢えて規定された、いわば注意規定、念押しの規定と考えるのである。

こう考えると、被疑者被告人自身が罪証に当たるとして、被疑者被告人の自殺の危険性は罪証隠滅のおそれに当たる、と言える。

ただ、個人的にはこの見解には違和感がある事が否めない。

反対説2

次に、被疑者被告人の自殺の危険性がある事は2号ないし3号には該当しないが、その趣旨からこれらの規定を類推適用する、というものだ。

そもそも勾留の制度趣旨は、証拠保全、適正に裁判を行い、処罰すべき犯罪者にその刑事責任をしっかりと取らせる、というものである。

このような制度趣旨は、被疑者被告人が自殺してしまった場合には全うできない。

具体的には、被疑者被告人が死んでしまえば同人から被疑事実、公訴事実に関する供述を得る事が不可能となる。

また、死んだ者を刑事処罰する事はできなくなる。

こうした事態を防ぐという勾留制度の趣旨は被疑者被告人の自殺のおそれがある場合にも妥当する。

そこで、2号3号を類推適用するのである。

しかし、勾留をはじめとする刑事処分は重大な人権侵害を伴うため、類推適用は避けるべきであるので、この反対説2は妥当ではないだろう(私見)。

おわりに

ここまで私見を展開してみた。

しかし、実務では被疑者被告人の自殺の危険性を理由として勾留を認める事は少ない?みたいだ。
(あくまで筆者独自調べによる。詳しくは知らん。)

正確な解釈や運用をご存じの方、ご意見のある方は、是非コメントをお願いします。

今回はここまで。


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