性被害は身近なもの
いきなりセンシティブなタイトルで申し訳ない。
ここのところ、色々なニュースで性被害関連の話題を目にするのだが、同時にSNS上ではそれについて、「そんなに多いはずがない」といった意見もちらほら見られた。
幼い頃から性被害を多く受けていた身としては、「けっこう多いんだよ!」を声にして言いたくなったのである。
これはもちろん、注意喚起や現状周知のためでもあるが、性被害を受けている本人が「私のってもしかして性被害……?」と気づくきっかけになってくれれば、という理由が大きい。
というのも、私もほとんどの性被害については、それが「被害」である自覚すら持てなかったからである。
もっと早く自覚できれば、もっと早くケアできれば、あんなに苦しまなかったかも……という口惜しい経験があったからこそ、今ここで書いておこうと思った。
※以下、性被害に関する記述があるので、苦痛を感じる方はブラウザバックして下さい。
"性被害"ーーたとえば痴漢やレイプなどは言うまでもなく性被害なのだが、そういったわかりやすい被害ではなくとも、その被害の形態や種類は山のようにある。
たとえば私の場合は、細かい、認識しづらく訴えづらい被害経験が多かった。一部を時系列順に並べてみる。
・幼稚園時代、公園で知らないおじさんから「かわいいねぇ」と、べとっと濡れた手で顔を撫でられる
・小学校時代、公園で遊んでいると公衆トイレの陰からおじさんがずっと(20分程度)見つめてくる
・小学校時代、友達の家で友達の兄から頭を掴まれ口淫を強要され精液を飲まされる
・小学校時代、下校時におじさんに後を尾けて来られる
・小学校時代、狂った思考の祖母から「女は早くから開発しておかなきゃ」と、股を何度も踏まれたり風呂場で股やナカを石けんで洗われる
・中学時代、学校の近くでおじさんに道案内を頼まれ、道中に笑い半分で「おっぱい大きいな!」と何度も叩かれる
・中学時代、同性の同級生に遊び半分で押し切られ、身体を舐められたり性器を触られたりする
・中学時代、正月の帰省で同じ家に泊まった社会人の従兄弟に下半身と性器を触られる
・高校時代、通学の電車で混雑にまぎれ、脚の間に膝を入れられたり尻に手を押し付けられたりする
・高校時代、既婚子持ちの予備校教師に「これは真剣な恋愛だ」「男女の関係になりたい」と言われ、すっかり洗脳されて愛人関係になる(金銭の授受なし)
・大学時代、持病でかかっていた医者から「治ったら愛人になってほしい」と言われ親密な態度を取られる
・大学時代、ゼミの教員から毎日鬼ライン&性的な話に付き合わされ、反発するとゼミ内で無視さるなどのハラスメントを受ける
・社会人時代、ひとりぐらしの家に配達に来た宅急便のおじさんに太ももを触られる
・社会人時代、婦人科の女医に内診された際に苦痛を訴えると根拠もなく「こんなの慣れてるでしょ〜笑」と言われ笑われる
・SNS上で性的な関係でないと相応しくないリプライを送られる
etcetc……
家庭環境が正常でなく、興味の対象や交友関係も特殊だったとはいえ、ざっと思い出せるだけでも結構な種類である。それぞれバリエーションがあったり回数があったりするので、実態はかなりえげつない。大してモテない、そんなに美人でもない私でもこうなのだから、世の女性たちの遭う被害の多さは推して知るべしである。
今思えば「明らかに犯罪だろ!」という内容も多々あるが、それでも意外と高校ぐらいまでは、自分がしている体験がなんなのかわからなかったりするものだ。
加害者は男女入り混じっているし、加害者との関係も、赤の他人だったり関係者だったり親族だったり様々だったから、余計に「性被害を受けた」という認識は難しかった。
これら様々な体験を改めて「性被害」の分類で括ったのは、「その経験によって性的な自己像が歪むものであったから」である。
(性交でも歪まなかったり言葉ひとつで歪んだりと個人差はあるが、何にしても、そのリスクがある行為(相手と自分の壁を越える行為)の一線は、相応しい相手以外、何人たりとも犯さないよう留意すべきだろう。)
ひとつひとつは小さい(?)とはいえ、塵も積もれば山となった性被害のPTSDで、20代中頃にカウンセリングを受けるまで、私の性に関する感覚は完全におかしくなっていた。
たとえば「レイプされてみたい」とか「身体なんて誰に触られても構わないし、誰が触っても同じ」とか「セックスしたい人にさせてあげるんだ」とか。
それが正常な思考でないことも自覚できておらず、カウンセラーに指摘された時は大変ショックだった。
(そういった感覚のまま恋愛をしても当然うまくいかず、成人から手を出されたり、既婚者や上の立ち場の人間から言い寄られたりで、夫以前に付き合った彼氏とは幸せな関係にはほとんど至れなかった。)
また、口淫の強要や祖母の虐待など、一部のショッキングな記憶は完全に忘れていたため、それに由来する「陰部の痒み・痛み」や「性感染症への恐怖」がしばしば湧き上がり、原因の思い出せないフラッシュバックに襲われパニックになることもしばしばであった。
表向きは自分自身でも「自分はレイプされたことはない=性被害に遭ったことはない」程度に思っていたので、自分の性的な価値観や恐怖に関して、「私って変態なのかなぁ」くらいにしか思えなかったのだ。
(今は治療により、日常生活に支障がない程度に回復している。)
カウンセラー曰く、ひとの心理的な反応や思考回路の形成には、必ず何かしらのきっかけがある。らしい。
大抵はそのきっかけを思い出せないだけで、ほとんどは見聞や体験に由来しているそうだ。
自分のそれは、何らかの被害の結果ではないだろうかーー現状、何かに苦しんでいる人は、一度そんな目で自分をよく見つめてみても良いかもしれない。
(※苦痛の大きい人や妄想の傾向のある人は、カウンセラーなど、専門家の安全なバックアップがある状態で行って下さい。)