アイデアは雑談から生まれる。遊び心とチャレンジ精神から誕生したヒット商品【栄光堂AM Vol.02】
ゲームセンター用のお菓子や土産菓子を企画開発している「栄光堂AM」では、役職や部署の垣根を越えてディスカッションが行われています。雑談や忌憚のない意見のなかから見つけ出す、新しいヒット商品の貴重なヒント。今回は、そんな商品開発の「タネ」の部分を営業担当・奥村部長と北風さん、企画開発の河野さんに話を聞きました。
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ブレインストーミングから新商品が生まれる
―商品はどのように作られていますか?
奥村:企画と営業の垣根を越えて、2週間に1度企画会議を行っています。会議といっても堅苦しいものではなく、雑談も含めたブレインストーミングです。売り場の声などもフィードバックし、次にいかしています。
北風:特に、奥村さんの意見が私たちと全然違う視点からのもので、真面目な考えをやわらかくしてくれるんです。
―真面目な考えとは?
北風:私や河野はもともと土産菓子を作っていたので、土産菓子の固定観念がありました。外装は箱で、5個以上入っていて、個包装で配れて…といったようなイメージです。特に、ターゲットがビジネスマンだったので、お菓子はラングドシャやクッキー・フィナンシェなどが主流。スナック菓子を土産にする発想がありませんでした。
奥村:私はバラエティーショップの専用商品や、ノベルティ菓子などを主に作っていました。オリジナリティーのある、少しとがった商品開発に関わっていたんです。また、カルビーさんや森永製菓さんといった大手製菓会社のお菓子をアッセンブリしていたので、多くの製菓会社と繋がりがありました。その繋がりを栄光堂AMの強みとしていかしていきたいと思ったんです。それで生まれたもののひとつが、『ベビースタークランチショコラ』です。「株式会社おやつカンパニー」のベビースターラーメンを、クランチショコラにしました。
北風:さらに、奥村部長は関西出身。関東出身の私たちと違って、関東の外からの視点で東京を見ることができます。住んでいる人は気づかない、東京の街の特徴を見つけるのがうまいんです。
奥村:本当に雑談として印象を話すので、流されることも多いですが。(笑)
―売り場の声とはどのようなものですか。
北風:お土産売り場の店員さんと話したり、購入されるお客様に質問したりして聞いたものです。現場ではこういうのが流行っているとか、次はどんなお菓子が欲しいなどといった、生の声を大切にしています。
―お客様とも直接話されるのですね。
北風:三角巾とエプロンを付けて売り場に立つこともありますよ。「どなたにあげるんですか」とか、どういう需要でどこに持って行くのかを聞くだけでもヒントが多いです。
―実際に現場の声はどのようにいかされていますか。
北風:中身だけでなくデザインなどにもいかされています。たとえば、羽田空港限定商品の『東京ティラミスクランチ』は当初16個入りと24個入りしかなかったのですが、もっと少ない個数はないのかという声から10個入りができました。
ヒット商品『歌舞伎揚ぷちショコラ』
―『歌舞伎揚ぷちショコラ』について教えてください。
奥村:誕生から50年以上販売が続いている「株式会社天乃屋」の『歌舞伎揚』を、濃厚なミルクチョコレートでコーティングした商品です。こちらも、揚げせんべいにチョコレートをかけたら面白いんじゃないか、という雑談がきっかけで生まれた「遊び×お菓子」の栄光堂AMの強みがいかされた商品です。
― 一時欠品も出るほど人気が出ました。
北風:ほかにない、インパクトがあると話題になり広まりました。バレンタイン期間は特に売れたんです。この商品をバレンタイン用のチョコとして会社で配ると最初聞いたときはびっくりしましたが、面白い商品なので話題のきっかけになるのだと知りました。
―まさに「遊び×お菓子」を楽しめる商品なのですね。
奥村:インパクトだけでなく、お菓子としての味も大事。チョコレートの甘さと歌舞伎揚の醤油たれにある塩気の甘じょっぱさが美味しいと評判になりました。
北風:歌舞伎揚げはインバウンド需要もあり、さらに裾野を広げようと考えています。秋冬限定なので今期は終売していますが、来期は違うフレーバーも検討中で、時期も早めから販売できればと思っています。
『TOKYO CROWN CAT』は飼い猫がモデル
―『TOKYO CROWN CAT』は河野さんの企画開発だと伺いました。
河野:2019年秋から販売された商品です。2018年にロイヤルウェディングなどで英国王室が流行ったことに着想を得て、紅茶味のお菓子はどうだろうと考えました。そこで、高級感のあるロイヤルミルクティー味のウエハースの開発を進めました。
―なぜ猫をブランドの顔にしたのでしょう。
河野:最初は英国風にしようと思っていたのですが、長く愛されるにはと考えたときに飼い猫のキジトラ「とらきち」が浮かび、猫はどうかなと思いました。遊び心だったのですが、英国風と猫の2パターンのパッケージを当時の社長(現代表)にプレゼンしたところ、「面白いからやってみろ」と猫の方が採用されました。
―飼い猫がモデルだったんですね。
河野:飼い主のひいき目もありますが、うちの猫はタレント性があると思ったんです。それまで猫のお菓子と言えばキャラクターものが多く、リアルな猫のイラストを全面に押し出したものはほかにありませんでした。今ではリアルな猫を打ち出した商品もたくさんありますが、その先駆けとなった商品ではないでしょうか。
北風:最初に売り場に持って行ったときは「なぜこんなリアルな猫?」「本当に売れる?」と言われ、現場も懐疑的でした。しかし、そのかわいさと高級感、美味しさからヒット商品に成長しました。今では土産物売り場を飛び出し、猫をテーマにしたイベントやバラエティーショップなどにも置かせてもらっています。
河野:猫好きの方にもお菓子好きの方にも喜んで頂けるお菓子をこれかれも発信していきたいですね。
東京クラウンキャットの商品をご覧になりたい方はこちら
※この記事の情報は2024年5月時点のものになり、商品販売情報等は変更になっている可能性があります。
Vol.3に続きます。
取材・編集協力:株式会社UP SPICE(https://www.up-spice.co.jp/)