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一年かけてカメラと仲良くなった話

①現地観戦はたのしい

2020年12月に、こんな記事を書きました。

もともと写真が好きだったので、プロレスを現地観戦した流れから観戦写真の撮影へ興味が向いたのも、わたしには自然なことでした。

自分の座った席目線で推し選手を撮りたい。

そう思ってデジタルカメラを買って、ぶっつけ本番ぐらいの勢いで会場へ行き、プロレスを好きになるきっかけとなった大好きな選手が勝利する瞬間を見届けた。
2020年で一番幸せだった夜のことを書いた記事です。



早いものであっという間に一年が経ちました。
あれからプロレス観戦に本格的にハマって、何度となくカメラを携えて会場へ足を運びました。

目の前で繰り広げられる戦いに見入ったり、推し選手や推しユニットの雄姿を目の当たりにして惚れ惚れしたり。
生配信だとカメラに抜かれたところしか見られないのに対して、現地観戦だとただひたすら好きな選手を目で追う事も出来る。そんな当たり前の事を再発見したり。
(多人数が登場するタッグマッチという試合形式だと、時にはカメラに映っていないところで強烈な攻防が繰り広げられたりするのです)



②後楽園ホールで掴んだ

昨年書いた記事に「後楽園ホールに行ってみたい」という野望を書きましたが、去年2月に念願叶って後楽園ホールでの初観戦を実現できました。
そしてその距離の近さと迫力に、大興奮したことを今でも覚えています。


下の写真は、後楽園ホール初観戦の日に撮ったSANADA選手です。
(2021年2月8日、南側B列10番台)

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まだ明るさの設定もピントを合わせるタイミングも把握しきれていなくて、自分でも率直に「ただ撮っただけ」という感じがします。



次の写真は、6回目の後楽園ホール観戦の日に、↑と同じカメラで撮ったSANADA選手。
(2021年6月2日、南側E列10番台)

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列の違いはあれど、偶然にも初観戦日とほぼ同じ角度から観れる位置関係でした。それゆえ比較が出来る。

実際の現地観戦の場では、大砲のように巨大なレンズを装着した本格的なカメラを構えているお客さんが何人もいらっしゃる事がザラにあって、ついつい自分のデジタルカメラと見比べては卑屈になる事も正直あります。

それでも気にせず場数を踏んで、愚直に撮ることを繰り返す中で。
少しは思い通りに撮れるようになってきたかも、と感じられるのが嬉しいです。

プロレス観戦に限らず、カメラと仲良くなるには
たくさん撮る→見返す→反省会→次に活かす
をPDCAサイクルのごとく繰り返すのが、一番手っ取り早いんじゃないかな、と経験的に実感した次第。



③現地観戦の思い出

昨年は現地観戦の中でも、本当にいろいろな事がありました。

夏の東京ドーム大会、何気なく一階スタンド席のチケットを申し込んだらバックネット裏で、ピントを合わせるのが難しすぎて何度となく泣かされたり。

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↑ぼんやりしてても存在感抜群な内藤哲也選手。
でもつらい。泣。


その後に行ったメットライフドーム大会もバックネット裏で(←すでにファンクラブ先行でチケットを一階スタンドで申込済だった)、会場に行ってちょっと落ち込んだものの。
実際に撮ってみたらこちらの会場はバックネットにばかりピントが合う事が無く、広さの割には意外に撮りやすい事に驚かされたり。

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↑バックネットどこ??
(パソコンからだとぼんやり見えるかも)

どちらも慣れない会場ゆえあたふたしましたが、これは今後も覚えておこうと思った次第です…。
とりあえず次に夏の東京ドーム大会があったら絶対アリーナ席を買う。絶対だ。



④「観る」のバランスを考えた

そうして写真を撮る事を含めた観戦を続けていく中で、「その場で写真を撮る事(レンズ越しに見る事)」「戦いを自分の目で見る事」のバランスを改めて考えるようにもなりました。

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↑は2021年10月4日の後楽園ホール大会で撮った試合前のSANADA選手ですが、この日の写真は試合前と試合後ばかりで、試合中に撮った写真が全然無いのです。

なぜかというと白熱したシングルマッチで目が離せず、カメラを構える時間も惜しいぐらいの祈るような気持ちで見入ってしまったから。
そしてSANADA選手の表情や一挙手一投足を目に焼き付けたり、客席を煽るSANADA選手に(声を出す応援が出来ないゆえに)応える手拍子を送ったりすることに必死だったからです。

ただ撮った写真がほとんど無い代わりに、自分の目で見た印象深い場面が鮮明に脳裏に焼き付いていて、時間が経った今でもすぐに思い出せます。
後楽園ホールの南側を向いて客席を煽る姿とか。
試合終盤に見せた密やかなガッツポーズとか。

結局SANADA選手が残り数十秒のところで敗れてしまったので、その後配信動画も一度も観ておらず、あの日あの場で見た光景がわたしの中で唯一絶対となっています。

レンズ越しではない、自分の目で見たからこその強度。
これからも現地観戦を続けていくなら、撮る事と観る事のバランスは改めて本気で考える必要がある、と強く思いました。



⑤現地観戦と高橋ヒロム選手

写真に関すること以外では、一番大好きな高橋ヒロム選手のジュニアタッグ初戴冠が観れるかもしれない!とチケットを買ったら、その直前の大会でヒロム選手が大胸筋断裂の大怪我を負い長期欠場を発表。
心配で苦しくなりつつ、ヒロム選手のいない大会をたいへん切ない気持ちで現地観戦した事もありました。


↑率直な心境や治療の過程を、自撮りで記録した動画です。
大怪我の直後にこれを思いついて実行する行動力とセルフプロデュース力、ほんとうに尊敬してます。


怪我による欠場から約半年が経った8月下旬。
ヒロム選手が8月27日の大会で復帰戦を行うことを発表し、偶然にもその日のチケットを購入していたわたし大興奮。
巡り合わせに感謝しながら後楽園ホールへ向かったものでした。

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寄せ書き(全部ヒロム選手の直筆)入りの横断幕から始まり、対戦相手のDOUKI選手と凄まじい戦いを繰り広げ、勝利後のマイクでもジュニアチャンピオンベルトの「ベルトさん」とリング上で久々の会話を繰り広げるなど、、、

破天荒なヒロムちゃんワールドの明るさのおかげで、半年前そしてこの半年間、ヒロム選手のいない大会で感じた切なさが見事に浄化されました。
彼の「プロレス」が観れる機会は本当に掛け値なしだと。

そう実感した経緯が、結果的にはその後の10月、SANADA選手の試合を観て「撮る事と観る事のバランス」を深く考える事へと繋がっていったのかもしれません。



⑥総括のように見届けた

前年に続いて、2021年もまた「BEST OF THE SUPER Jr. 28(以下BOSJ)」が、年末に近い時期の開催となる事が発表されました。
ヒロム選手が所属する階級「ジュニアヘビー級」の選手たちでリーグ戦を行い、その頂点を決める大会です。

優勝決定戦の開催は、12.15両国国技館に決定。
リーグ戦1位の選手と2位の選手が戦い、勝った方が今年の覇者となります。

昨年に比べるとプロレスの試合を観る楽しさも身についていたので、誰が決勝にあがってきても面白く観れるだろうと考えて、優勝決定戦のチケットをファンクラブ先行で購入しました。
そしたらなんと大本命のヒロム選手がリーグ戦1位通過。

そりゃもう嬉しかったですとも。
一年前に続き、優勝決定戦という大舞台でまたヒロム選手のプロレスが観れる。
というかもうここまで来たら二連覇を見せてくれ。頼む。

そういう祈りを胸に燃やしつつ、カメラを携えて両国国技館へ行きました。

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人生初の桝席。
本来なら4名で座る席ですが、席間隔の都合上2名席だったので、恋人と一緒にひろびろ座りました。



昨年書いた記事でも「とんでもない大事件」というワードを使いましたが、今年は今年で対戦相手のリーグ戦2位・YOH選手の元タッグパートナーでヒールターン(わかりやすく言うと闇堕ち)したSHO選手が、試合に突如乱入してくるという波乱の展開。

しかしそれを乗り越えた後は一進一退の熱い攻防を繰り広げ、最終的にヒロム選手が勝利。
史上二人目となる大会連覇を達成しました。

この日撮った写真も順番に眺めてみて、SHO選手の乱入を経て試合再開した後は、試合終了まで全然撮っていない事が分かりました。

2020年の優勝決定戦はヒロム選手の試合初観戦だった事もあり、ただただ目に焼き付けるのに必死で撮る余裕が無かったのです。

じゃあ2021年は…?
と考えてみても思い出せるのは、
応援して、喜んで、焦って、祈って、動揺して、決まってくれって手に汗握って、返せ返せ返せってハラハラして。
そういう真っ直ぐで熱い興奮だけ。

「撮る事と観る事のバランス」って理屈っぽく考えるのはやっぱり現実に戻った後の冷めた頭の自分で、現地で激闘を目の当たりにして感情ぶんぶん揺さぶられてたら出てくる余裕はないみたいです。
生身の肉体ひとつでリングに上がり、どれだけ打たれても何度でも立ち上がるプロレスラーの姿を前にすると、感情や高揚は言葉よりも速いのだと思い知らされます。



そうしてようやくカメラを手に出来たのは、ヒロム選手が必殺技「TIME BOMB Ⅱ」を放って3カウントを奪い、勝利が決定した後でした。

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その場で肉眼でも見たいけれど。
ただこうして撮ったことで、自分の席からの視界で、自分の目で見るよりも鮮明に残せるという利点は代えがたいものがある。
こうして何度でも見られるわけだし。

動きが速い試合中は、わたしのカメラの性能では追いつかないので、見た記憶も薄いし撮った写真も何が何だか、、、という残念なことになりかねない。
だからその時はもうカメラの存在を忘れて、目の前の光景にただただ没頭する、という状態が一番バランスが良いみたいです。

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一番見たかった光景を見せてくれた。
そして去年撮った瞬間よりも、より納得出来る一枚として留められた事も嬉しく思います。




買った直後だった一年前と比べると、確かに仲良くなれた。
そこは胸を張れる。
力量と性能の範囲内とはいえ、ある程度は自在に駆使できるところへと近づけたから。

そして経験をもって理解しました。
プロレス観戦における「カメラと仲良くなる」は、わたしにとってはPDCAサイクルめいたトライアンドエラーに追加で
「撮らずに自分の目で観る」
ことを選び取るのも絶対的に必要みたいです。

確かにきっかけは「撮りたい」だった。
でもそればかりになると、見落としてしまうもの、零れ落ちてしまうものがどうしたって出てくる。
衝動を最優先したがための結果でもいい「好きな選手の闘いをこの目で見届ける」という自発的な選択も絶対に必要なことだ。

一年かかりましたが、今はそんなふうに考えています。

そこを掴んでからの2022年。
今年もカメラと一緒に「プロレス観戦」を楽しみたいです。