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週末読書メモ12. 『伝習録』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

二宮尊徳や吉田松陰、西郷隆盛等に影響を与えたという陽明学の祖、王陽明の代表作。

いったい、どれほどの学習と思索、そして実践を経たら、ここまで辿り着けるのだろうか。そんな印象を抱く一冊でした。


陽明学の簡単な紹介としては、様々なキーワードがありますが、特に重要なのは「致良知」と「知行合一」の2つです。

「致良知」とは、人は生まれながらに心と理(体)が一つであり、心があとから付け加えるものでない。そのため、心が私欲によって曇っていなければ、心のあり方が生き様を通じて良知に繋がるというもの。

「知行合一」とは、行動の伴わない知識は、本当の意味で知っているとはいえない。実践をすること(更に言うと続けること)によってのみ、真の知に至れるというもの。

この2つの思想や本書中の細かい思考・行動規範は、参考になるものばかりです。ただ、個人的に最も印象深かったのは、筆者(王陽明)自身の思考様式の凄みです。


一般的に、陽明学の説明では、"良知は既に心の中にある"や"実践が重要"が強調されます。しかし、その基盤には、王陽明自身の常人離れした量の学習と思索がありました(端的にいうと、めっちゃ勉強している笑)。

『論語』や『孟子』という四書五経を暗唱できるほど頭に入れ、更に批判的思考を持って、古典に対して、同意や意見を明瞭に述べます。それが出来るには、どれほどの情報のインプットとプロセスの量が必要なんだろうか…

王陽明自身、自らが述べる「真の知」に至るまで、古典をただ頭に入れるだけでなく、咀嚼して、何度も何度も反芻したことが感じ取れます(ただし、それはあくまで実践の始まりに過ぎないと笑)。


ファーストリテイリングの柳井正さんも、著書『経営者になるためのノート』で下のことを言っていました。

※抜粋『経営者になるためのノート』

経営者としての本当の学習は、知識や情報を、
「自分のことに置き換えて考えてみること」
そして、
「実践してみること」
この二つがなければ、意味がありません。

陽明学でいう「知行合一」とは、まさにこのことかと思います。
※上記に加えて、「並外れた学習と思索」が不可欠だと…(王陽明・柳井正さんに共通して、膨大な量の本を読まれています)


100年以上の歴史の荒波を生き残った本、そして、その著者の凄みを感じる本でした。

本書は、一文一文が核心をついており、読み飛ばしが許されず、正直、理解と咀嚼が非常に大変です。難解な部分もあり、今の自分では、全ては咀嚼ができませんでした。

ただ、王陽明も”学ぶ者が、一足とびに聖人の域に入ることなどありえない”と言っています。

普通の人は、起き上がったり転んだりしながら、実践を繰り返すしかないと。一歩一歩積み重ね行かないんだろうなあ。


【本の抜粋】
それらはすべてわが心にかかっているのであり、であればこそ、心がそのまま理であるのだ。この心が私欲に蔽われていなければ、それはそのまま天理なのであり、それ以上何も外から付け加えるものはない。

そもそも知っているという以上、それは必ず行ないにあらわれるものだ。知っていながら行わないというのは、要するに知らないということだ。

志を持するというのは、心に痛苦があるときのようなもので、心がその痛苦に占められているかぎり、むだ話をしたりむだなことにかかわりあっている余裕などありはしまい。

知は行の始(※もと)、行は知の成(※じつげん)である。聖学にあっては(知行の)功夫はただ一つで、知と行との二つに分けることはできない。

善念が起きた時には、それを察知してその善念を充実させ、悪念が起きた時には、それを察知して防ぎとめる。この、知り、充実させ、また防ぎとめるのは、志による。

樹を植える人は必ずその根を培い、徳を植える人は必ずその心を養う。樹の生長を求めるなら、必ずその生育のはじめに、無駄な枝を摘み取らねばならず、徳が盛んになることを求めるなら、必ずその初学のはじめに、ほかへの関心をきりすてることだ。

だいたい上智の人などはほとんど皆無に近いのであって、まして学ぶ者が、一足とびに聖人の域に入ることなどありえない。
起き上がったり転んだり、進んだり退いたりするのが、功夫にとってむしろ自然なあり方で、このような曲折はあらかじめ避けられないものなのだ。

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