(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)
25カ国で刊行、世界100万部のベストセラー『シルクロード全史』。
その道を制するものが世界を制す。そう言われた場所「シルクロード」。
アレクサンドロス大王、イスラム、十字軍、モンゴル帝国、大航海時代と世界支配をかけた争いからはじまり、石油争奪戦、独ソ戦、冷戦、アメリカの台頭、湾岸戦争、テロ、アルカイダと富と暴力をめぐる対立の歴史まで。
日本にいると馴染みが薄い、シルクロード(特に中東)を舞台に、歴史の新たな視点を与えてくれる一冊となっています。
本書の内容は、中東(イスラム)の繁栄、欧州の征服、欧米の覇権争いの大きく3つの物語に分かれます。
第1部(中東の繁栄時代)のポイントは、今は後進的に捉えられがちな中東地帯も、実は経済・政治・文化のどれを取っても先進的であったということ。
それも、欧州とは比べ物にならないほどに。現在の姿だけを見て、物事を判断するべきではないことを痛感させられます。
第2部(欧州の征服時代)では、欧州が、南米やアフリカ、中東を征服していく様が描かれます。
そこで注目すべきことは、様々な点で劣っていた欧州が勝てた要因。それは、軍事技術の突き抜けた進化でした。その時代・世界において、何が生き残りの要因となるかを見極める重要性を感じざるを得ません。
そ第3部(欧米の覇権争い時代)で浮かび上がるのは、中東領域の混沌・混乱とした状況です。中東地域が少しづつ勢力や自立性を確立しつつある中で、各国間のせめぎ合いが書かれています。
だが、筆者はこうも言います、これは産みの苦しみだと。そして、長い戦禍と悲劇を経て、シルクロードがはいま、息を吹き返そうともしていると(その背景にあるのが、中国の一帯一路構想による膨大な投資であり)。
本書は、シルクロードを舞台に2000年以上の歴史を触れるため、テーマは多岐に渡り、読み手によって、得られる示唆が異なると思われます。
その上で、シルクロード最大の特徴は、何といっても、この場所が人類の欲望と憎しみが交錯し結びつけてきた場所であること。
文化の点でも、
イノベーションの点でも、
異なるものとの交わり結びつくことが、新たな創造に繋がると言う話は枚挙にいとまがありません。その際たる事例を、シルクロードの歴史は内包しています。
すぐに活かせるわけではない、けれど、心に深く残る一冊でした。
P.S.
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