(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)
一流のマーケター・戦略家の方による、まるで現代の兵法書のような一冊。
現代のマーケティング界隈で、ひときわ存在感を放つP&G出身の方々。
本作は、その中のお一人である音部大輔さんによる最新作となります。
まず本書では、現代のマーケティング・ビジネス界の取り巻く状況が説明され、冒頭から引き込まれます。
複雑化した現代において、マーケティング活動の難易度が上がっていることが背景にあり、本書では、マーケティング活動全体を統御する必要性・その手法が詳らかとされていきます。
その設計図こそが、サブタイトルにもある「パーセプションフロー・モデル」となります。
圧巻。古今東西の戦略理論、および、25年以上にも渡る第一線での実戦から得られた知識・経験が土台にある、普遍的であるとともに、極めて実務的なフレームワークとなっています。
学者の方々が作られた理論に対して、項目名がシンプルでありつつも、項目数が多いという特徴は、パーセプションフロー・モデルが、簡易さではなく、結果を出すことを重視していることを示しているように感じます。
長い年月、このモデルを活かし・磨き上げられて来られたこと、その境地の高さに鳥肌が立ちました。
読感としては、RPG序盤で最終武器を手にしたような感覚です(笑)
正直、今の自分の力量では活かしきることが容易ではなく。けれども、これを使いこなせるようになった未来、非常に大きな戦力を駆使できることを確信するような内容でもありました。
個人的に最も刺さったのは、下の箇所です。
これは…まさしく、孫子のいう「我は専もっぱらにして一となり、敵は分かれて十とならば、これ十をもってその一を攻むるなり。すなわち、我は衆おおくして、敵は寡すくなし」と同じ。
戦いの原理原則は普遍。歴史を学んできた人・知っている人が辿り着く場所があることを、改めて感じるような一節でした。
また、本書の魅力は、上記パーセプションフロー・モデルの概要と使い方、実践例が示されていることと同時に、組織構築・強化に関わる部分が強調されていることです。
結局、いかなるマーケティング・戦略を遂行するかは、資源に応じるため、人・組織の総力が重要であることは間違いありません。
”素人は「戦略」を語り、プロは「兵站」を語る"、”三流は戦術を語る。二流は戦略を語る。一流は兵站を語る。”という格言があります。
現代ビジネス一流のマーケター・戦略家と呼ばれる音部さんが、組織(資源)も強調することは、現代においても、兵站が重要であることを物語っています。
余談ですが、たまたま、筆者の音部さん、同じくP&G出身の野上麻里さん(著書『ピークパフォーマンス』)さんとお会いする機会に恵まれました。
お二人に共通していたのが、その知見の高さだけでなく、一介の若者に対しても、明るく気さくに接してくださるそのお人柄。
お二人が素晴らしい方であるのは勿論な上で、スキルと人間性が高いレベルで共存している人々を引き寄せ、更に磨き上げるP&Gという器に感服せざるを得ません。
自分が、これからの人生でP&Gで働くことは叶わなくとも、そんな方々が共に働きたいと思える人間を、組織を目指して行きたいなあ。
少し話が逸れましたが、音部さんの過去作、『なぜ「戦略」で差がつくのか。』、『マーケティングプロフェッショナルの視点』を何度も参考にしていたため、期待して本書を手に取ったのですが、その期待を大きく上回る内容でした。
マーケティング戦略の策定・実行の観点からも、組織の構築・強化の観点からも、多くの方にとって必見です。
強い者はもちろん、弱い者こそ、戦略と兵站と向き合うことが、今いる世界を動かす突破口となるはず…いや、もうそれしかない。
P.S.
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