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週末読書メモ90. 『ブラック・スワン 不確実性とリスクの本質』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

不確実性とリスクへの向き合い方、世界の見え方が変わる一冊。


日本だとメルカリの山田親太朗さん、海外だとAmazonのジェフ・ベゾスさんが一推しする本書、『ブラック・スワン』。

幼き頃にレバノンでの内乱を体験し、トレーダーを経て、大学教授として研究を行う著者ナシーム・ニコラス・タレブさん。自らの体験と歴史、哲学、心理学、経済学、数学という多岐に渡る知識から、不確実性とリスクの本質に迫っていく一冊となります。


詳細な内容は省くとして、本書の肝となる概念は2つ、「ブラック・スワン」と「バーベル戦略」です(分かりやすく知るには下の動画がオススメ)。


9.11やリーマンショック、3.11、最近だと新型コロナウイルス。

人々が起きるとは思えていなかったこと、または、いつか起きると思いつつタイミングを全く予想できていなかったこと。しかし、それらの事象はそれ以前と以後で世界を変化させるほどの影響をもたらします。

そのような事象を、筆者は「ブラック・スワン」と定義しました。

この話は、人間が経験や観察から学べることはとても限られていること、それに、人間の知識はとてももろいことを描き出している。何千年にもわたって何百万羽も白い白鳥を観察して確認してきた当たり前の話が、たった一つの観察結果で完全に覆されてしまった。そんなことを起こすのに必要なのは、黒い鳥がたった一羽、それだけだ。

この本で黒い白鳥と言ったら、それはほとんどの場合、次の三つの特徴を備えた事象を指す。
第一に、異常であること。つまり、過去に照らせば、そんなことが起こるかもしれないとはっきり示すものは何もなく、普通に考えられる範囲の外側にあること。第二に、とても大きな衝撃があること。そして第三に、異常であるにもかかわらず、私たち人間は、生まれついての性質で、それが起こってから適当な説明をでっち上げて筋道をつけたり、予測が可能だったことにしてしまったりすること

ブラック・スワンの特徴は3つ。予測できないこと、非常に強いインパクトをもたらすこと、そして、いったん起きてしまうと、いかにもそれらしい説明がなされ、実際よりも偶然には見えなくなったり、最初からわかっていたような気にさせられたりすること。

筆者は、人類が何度もブラック・スワンに翻弄されてきたにも関わらず、歴史の教訓を忘れ、世界を予測できると勘違いしていることに苦言します。


だからこそ、重要なのは未来を予測しきれない真理を理解し、ブラック・スワンに立ち向かい、むしろそれを利用していくべきだと。そこから、導かれたアプローチが「バーベル戦略」となります。

(a)私たちはトンネル化を起こし、同時に「狭く」考える傾向がある。そして、(b)私たちの予想はものすごく過大評価されていて、自分では予想できているつもりの人たちもだいたい、実際には予想なんてできていない。
(中略)私たちにとって予想は複雑すぎる。それだけでなく、私たちの手に入る道具を全部使っても複雑すぎる。黒い白鳥は捉えどころがない。予測したって無駄だ。

バーベル戦略とはこんなやり方だ。黒い白鳥のせいで、自分が予測の誤りに左右されるのがわかっており、かつ、ほとんどの「リスク測度」には欠陥があると認めるなら、取るべき戦略は、可能な限り超保守的かつ超積極的になることであり、ちょっと積極的だったり、ちょっと保守的だったりする戦略ではない。
「中ぐらいのリスク」の投資対象にお金を賭けるのではなく、お金の一部、たとえば八五%から九〇%をものすごく安全な資産に投資する。
(中略)残りの一〇%から一五%はものすごく投機的な賭けに投じる。

「バーベル戦略」。それは、超保守的かつ超積極的なアプローチです。

9割のリソースを確実に生き残る・勝つ場所へベッドしつつ、1割のリソースを挑戦やイノベーションの可能性へベッドする戦い方。

これは本当に示唆に富んでいて…

結果を確約しつつ、上がり幅は青天井。中途半端なリスクをとって死んでいったり、リスクを全く取らずに凡庸な結果しか出せないライバルを尻目に、突き抜けられる可能性を大いに感じるやり方のように思えます。


自分の意思でイタチごっこや序列を捨てるのなら、それはイタチごっこや序列を外れるのではなく超えるということだ。
(中略)自分でつくったゲームなら、だいたいは負け犬にならない。
黒い白鳥の文脈で言えばこうなる。ありえないことが起こる危険にさらされるのは、黒い白鳥に自分を振り回すのを許してしまったときだけだ。自分のすることなら、いつだって自分の思いのままにできる。だから、それを自分の目指すものにするのである。

「自分でつくったゲームなら、だいたいは負け犬にならない」。

孫子しかり、前回のP&G社しかり、古今東西において戦略の要諦は、勝つべくして勝つこと。

不確実性がより一層増している現代を生きる私たちにとって、大きな示唆を与えてくれる一冊。生き残るためにも、結果を出すためにも、この本が与えてくれた示唆を大切にしていきたいです。


【本の抜粋】
この話は、人間が経験や観察から学べることはとても限られていること、それに、人間の知識はとてももろいことを描き出している。何千年にもわたって何百万羽も白い白鳥を観察して確認してきた当たり前の話が、たった一つの観察結果で完全に覆されてしまった。そんなことを起こすのに必要なのは、黒い鳥がたった一羽、それだけだ。

この本で黒い白鳥と言ったら、それはほとんどの場合、次の三つの特徴を備えた事象を指す。
第一に、異常であること。つまり、過去に照らせば、そんなことが起こるかもしれないとはっきり示すものは何もなく、普通に考えられる範囲の外側にあること。第二に、とても大きな衝撃があること。そして第三に、異常であるにもかかわらず、私たち人間は、生まれついての性質で、それが起こってから適当な説明をでっち上げて筋道をつけたり、予測が可能だったことにしてしまったりすること。

私たちは、私たちは学ばないということを私たちは学ばないということを自然とは学ばない。問題は私たちの頭の構造にある。私たちは法則を学ばない。事実ばかり学ぶ。事実しか学ばない。どうやら、メタ法則がうまく理解できないようだ。私たちは抽象的なことをバカにする。しかも、熱心にバカにするのだ。
(中略)私たちの祖先は一億年以上にわたって脳みそを使わない哺乳類の動物として過ごしてきた。やっと脳みそを使い出したのは、歴史の中でほんの一瞬にすぎない。

私にとって博識かどうかはとても大事なことだ。博識だということは、純粋な知的好奇心を持っている可能性が高い。開かれた頭を持ち、ほかの人の考えを知りたいという思う人である可能性が高い。何よりも、博識になるということは自分の知識に満足していないということであり、そういう不満があると、プラトン性だの五分間マネージャーがする単純化だの、専門バカ学者の俗物根性だのに陥りにくい。実際、知識欲なしで学問に向かうとひどいことになる。

(a)私たちはトンネル化を起こし、同時に「狭く」考える傾向がある。そして、(b)私たちの予想はものすごく過大評価されていて、自分では予想できているつもりの人たちもだいたい、実際には予想なんてできていない。
(中略)私たちにとって予想は複雑すぎる。それだけでなく、私たちの手に入る道具を全部使っても複雑すぎる。黒い白鳥は捉えどころがない。予測したって無駄だ。

バーベル戦略とはこんなやり方だ。黒い白鳥のせいで、自分が予測の誤りに左右されるのがわかっており、かつ、ほとんどの「リスク測度」には欠陥があると認めるなら、取るべき戦略は、可能な限り超保守的かつ超積極的になることであり、ちょっと積極的だったり、ちょっと保守的だったりする戦略ではない。
「中ぐらいのリスク」の投資対象にお金を賭けるのではなく、お金の一部、たとえば八五%から九〇%をものすごく安全な資産に投資する。
(中略)残りの一〇%から一五%はものすごく投機的な賭けに投じる。

自分の意思でイタチごっこや序列を捨てるのなら、それはイタチごっこや序列を外れるのではなく超えるということだ。
(中略)自分でつくったゲームなら、だいたいは負け犬にならない。
黒い白鳥の文脈で言えばこうなる。ありえないことが起こる危険にさらされるのは、黒い白鳥に自分を振り回すのを許してしまったときだけだ。自分のすることなら、いつだって自分の思いのままにできる。だから、それを自分の目指すものにするのである。

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