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週末読書メモ92. 『幼年期の終り』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

生涯、心に残り続ける1冊。


世界3大SF作家の1人、アーサー・C・クラーク。

彼の代表作が、この『幼年期の終り』となります。

ある日、突如として地球上の大都市の上空を覆う宇宙から巨大な船団。人類では太刀打ちできないような知能・テクノロジーを持った超生物種族(オーバーロード)達。

彼らの真の目的は?人類の未来は?

SF界の巨匠が、人類や世界、宇宙の未来への想いを込めた傑作となります。


あーーー………この本の感想には、どんな言葉を紡いだらよいのだろう。

ただ言えることは、世に溢れる宇宙人侵略話とは大きく一線を画します。

ネタバレになるため、詳細は控えますが、人生、運命、友情、愛情、科学、進化等々、様々なテーマが込められたこの作品に思わず心が打たれます。

彼らの知力は、人類のそれの十倍 ーー いやおそらく百倍にも匹敵するだろう。だがそれも、最終の決算には、なんの影響も及ぼすことはないのだ。彼らは人間とすこしもちがわず無力であり、まったくおなじように圧倒されている ーー 千億の太陽から成る銀河系の、そしてさらに千億の銀河系から成る大宇宙の、想像を絶した複雑さに。


本作は、読書家としても有名三谷宏治さんのベストセラー『戦略読書』で紹介されていたのを拝見し、いつかの日か手に取りたいと思っていました。

(この本の中にある戦略フレームワーク「PPM」を応用した「読書ポートフォリオ・マトリクス」は必見です。人生において、いかなる本を読むべきかの気づきがあります)

SF小説は、これまで読まない人生を歩んできましたが、『戦略読書』でも取り上げれていた本書『幼年期の終り』と『星を継ぐもの』。どちらも、老若男女問わず、心からお勧めしたいほどの感動や示唆がありました。


読後、読む前の自分や世界に戻ることが出来なくなる本…

毎年に1冊程度の頻度で、そんな本に出会うことがあります。

昨年度読んだ中でのNo.1であり、そんな本が『戦争と平和』でした。

本作『幼年期の終り』も、自分の人生にとってかけがえのないそんな1冊であり、おそらく今年度No.1の本になりそうです。


しかしカレルレンは知っていた ーー 彼らは最後まで諦めることはない。どんな運命が彼らのものであろうと、決して絶望的になったりはせずに待つだろうということを。彼らはこれからもオーバーマインドへの奉仕をつづけるだろう。なぜなら、ほかに道はないからだ。だが、その奉仕のうちに、おのれの魂までも失うことは決してないのだ。

「なぜなら、ほかに道はないからだ。だが、その奉仕のうちに、おのれの魂までも失うことは決してないのだ」

『戦争と平和』、『幼年期の終り』ともに、壮大な物語や琴線に触れるようなセリフがあることに加えて、どこまでの大きく、深く、複雑な世界や歴史の存在を感じされられます。

そして、人は世界や歴史の大河の一滴でしかないことも。けれど、その一滴だとしても、諦念と信念を持って、生き続けることの尊さも。

そんなことを思い起こしてくれる名作でした。


【本の抜粋】
生涯を賭けた仕事が一瞬のうちに潰れ去っていくのを見ながら、彼は悲しみは感じなかった。彼は人類を星々へ到達させるために汗を流した。そして、まさにその成功のまぎわに、星が ーー 冷やかな、超然とした星が ーー 逆に彼のほうへ降りてきたのだ。これこそ、歴史が息をひそめる一瞬であり、現在が過去から断ち切られる瞬間なのだった。

そしてストルムグレンは望んだ ーー いつの日にかふたたび自由に地球上を歩きまわれるようになったとき、カレルレンがこの北国の森林に訪れてくれることを。そして、彼の友となった最初の人間の墓の前にたたずんでくれることを。

五十年という年月は、一つの世界とその住民たちとを、ほとんど原型をとどめないまでに変えてしまうに足る年月である。その仕事に必要なのは、社会工学の的確な知識と、めざす目標への明確な見通しと ーー そして力である。

彼らは、自分たちがいかに幸運であったかを決して知ることはないだろう。もうかれこれ七、八十年ものあいだ人類はいかなる種族もかつて知らなかった快楽を貪ってきたのだ。いうなればそれは、〈黄金時代〉であった。だが、金色とはまた落日の色、秋の色でもある。そしてまだカレルレンの耳だけが、冬の嵐の最初の啜り泣きを聞きつけることができるのだった。
そしてまた、ただカレルレンだけが、この〈黄金時代〉が一挙に終末までつっ走ってゆく、その動かしがたい速さを知っていたのである。

残された者たちには、いくつもの道があった。だが、行先は一つだった、ある者はいった。
「世界はまだ美しい。いずれは別れねばならないとしても、なぜ出発を早める必要があるだろうか?」

彼らの知力は、人類のそれの十倍 ーー いやおそらく百倍にも匹敵するだろう。だがそれも、最終の決算には、なんの影響も及ぼすことはないのだ。彼らは人間とすこしもちがわず無力であり、まったくおなじように圧倒されている ーー 千億の太陽から成る銀河系の、そしてさらに千億の銀河系から成る大宇宙の、想像を絶した複雑さに。

しかしカレルレンは知っていた ーー 彼らは最後まで諦めることはない。どんな運命が彼らのものであろうと、決して絶望的になったりはせずに待つだろうということを。彼らはこれからもオーバーマインドへの奉仕をつづけるだろう。なぜなら、ほかに道はないからだ。だが、その奉仕のうちに、おのれの魂までも失うことは決してないのだ。

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