見出し画像

週末読書メモ102. 『道しるべ』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

深く強く美しい言葉で綴られた、内なる自らとの対話集。


元国連事務総長、ダグ・ハマーショルド。

欧米のスウェーデン人ながら、植民地支配を受けていたアフリカ人の独立のため、自らの存在を捧げたその人生。

(それが、かの時代において、どれほどの困難で軋轢が生じたことかは、下の動画を見ると想像に難くありません)

そんな孤独で過酷な戦いの日々の中、自らのための心の日記として書かれていたのが本書となります。


〈生〉は、おまえの力にそぐわぬことを要求したりはしない。おまえの勲功は、ただ、逃亡しなかったというだけである。

孤独がわれわれに課せられたものであろうと、われわれのほうから探しもとめたものであろうと、それがわれわれの前に開いてみせる将来の展望はただひとつしかない。すなわち、荒野において絶望するか、それとも可能性に賭けて、ついには超越する交わりのうちに生きる権利をかちうるにいたるか、そのいずれかを選択することなのである。

ラフネット生命の創業者であり、ビジネス界随一の読者出口治明さん。その出口さんが本書に対し、「いつなんどきどのページを開いても、常に僕の人生の併走者であった」と絶賛するのも頷けます。

「道しるべ」は、1人の人間の純粋な魂の内省の記録です。そこには、権謀術策が渦巻く国際連合を舞台にした政治的駆け引きや、冷戦構造の中で動乱を繰り返す国際政治の苛烈さなどを読者に想起させるものはほとんど何もありません。そこにあるのは、著者が生まれ育った北欧の森林から流れ出る清水を思わせるような、清冽で凛とした人間の内奥の静かな叫びです。

(出口の入口:人生の道しるべ)


その紡ぎ出された言葉の美しさはゲーテのようで。

一方で、その刻まれた言葉の奥にある強さは、マルクス・アウレリウス・アントニヌス(『自省録』)を思い起こします。

ダグ・ハマーショルドの人生は、マルクス・アウレリウス・アントニヌスと同様に、決して生半可なものでは無かったと想像します。

現実と理想の間の大きな苦闘・葛藤と向き合い、人間の存在や人生の意味について、自らの深淵の世界で見たもの、悟ったもの。それが両者の著書には綴られており、言葉にし難い感動に繋がります。


もっとも長い旅は
内面へむかっての旅である。

人生に「よし」と言うことは、同時に自分自身に「よし」と言うことでもある。

みち、
おまえはそれを辿るがよい。
さいわい、
おまえはそれを忘れるがよい。
さかずき、
おまえはそれを飲み干すがよい。
いたみ、
おまえはそれを隠すがよい。
こたえ、
おまえはそれを知るがよい。
いやはて、
おまえはそれに耐えるがよい。

自分には自分の道がある。その道を、一歩一歩でも歩み続けるしかない。

そんな言葉が、心に遺る一冊でした。


【本の抜粋】
さらに遠く、道の土地へと
私は駆り立てられてゆく。
小道は嶮しくなりまさり、
大気はいよいよ冷え、凛冽の度を加える。
知らざるわが目的の地から
吹きよせる風に触れて
期待にうずく
心の弦はふるえる

〈生〉は、おまえの力にそぐわぬことを要求したりはしない。おまえの勲功は、ただ、逃亡しなかったというだけである。

もっとも長い旅は
内面へむかっての旅である。

孤独がわれわれに課せられたものであろうと、われわれのほうから探しもとめたものであろうと、それがわれわれの前に開いてみせる将来の展望はただひとつしかない。すなわち、荒野において絶望するか、それとも可能性に賭けて、ついには超越する交わりのうちに生きる権利をかちうるにいたるか、そのいずれかを選択することなのである。

内面の静寂を保つこと ーー 喧騒のなかにあって。開かれたまま、穏やかなままでいること、雨の降りそそぎ、麦の芽ばえる、肥沃な暗闇に包まれた、しっとりした腐葉土のままでいること ーー 白昼の不毛の光を浴びて、埃を捲きあげながら広場をどしどし踏みしだいてゆく人たちが、どれほど大勢いようとも。

人生に「よし」と言うことは、同時に自分自身に「よし」と言うことでもある。
試みから力強い支えへといっかな天下しようともせぬ、あの要因にたいしてさえも、よし。

みち、
おまえはそれを辿るがよい。
さいわい、
おまえはそれを忘れるがよい。
さかずき、
おまえはそれを飲み干すがよい。
いたみ、
おまえはそれを隠すがよい。
こたえ、
おまえはそれを知るがよい。
いやはて、
おまえはそれに耐えるがよい。

P.S.
農業インターン・副業・プロボノ大募集!

学年や年齢、農業経験の有無は問いません!
インターン・副業・プロボノに興味のある方は、ぜひご応募ください!
農業界の未来を、共に切り拓いていきませんか?

【①インターン】

【②副業・プロボノ】
※個別対応のため、TwitterのDMでお問合せください(下はイメージ)。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?