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週末読書メモ25. 『イノベーションの最終解』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

名著『イノベーションのジレンマ』の著者、クレイトン・M・クリステンセン。

『イノベーションのジレンマ』、『イノベーションの解』に続く、『イノベーションの最終解』。この三部作によって、クリステンセンのイノベーション三部作は完結します。

凄い。この世界には、現実の複雑で膨大な事象の束を、ここまでも緻密な理論にまで昇華されている方がいることが良く分かります。


『イノベーションのジレンマ』では、新規成長事業を立ち上げるのはなぜこれほどまでに難しいのかを、『イノベーションの解』では、成長事業を実際に立ち上げるプロセスで予測通りの結果を導くための方法を説明されていました。

過去二部作は「内部者から外を見る視点」であったのに対し、本作では「外部者が内を見る視点」となっています。解説では、『イノベーションの解』が戦術レベルの指南書だとすれば、本作『イノベーションの最終解』は戦略レベルの指南書とも書かれています。


内容の要旨としては、業界の変化を予測するには、以下三つの反復的なステップからなると言います。

業界の変化を予測するためのプロセス
一 変化のシグナルを探す。業界の環境変化や、無消費者、満たされない顧客、過剰満足の顧客を新しい方法で獲得しようとしている企業を示唆するシグナルはないだろうか。
二 競争のバトルを評価する。競合起業の経営状況を把握し、非対称性の剣と盾を持っている企業を探す。
三 破壊のプロセスを正しく実行できるチャンスを増やす、または減らすような、重要な戦略的選択に目を配る。

内容の詳しい説明は割愛するとし、印象に残ったことは、理論は深く細かい部分まで理解・活用できないと扱えないことです。

各章のタイトル・まとめに記載されているような結論は、決して真新しいものばかりではありません。しかし、実現難易度・求められる基準の高さを、実際にイノベーションや変革に関わった人ならば感じざるを得ません。

本シリーズの素晴らしいことは、イノベーションを実現するために、要旨ごとにこと細やかなチェック項目が述べられていることです。そして、そのチェック項目が50個を超えます(特に、捕捉本である『イノベーションの解 実践編』には、多くのチェック項目が書かれています)。


何という項目数。イノベーションを起こす力が足りないことは自覚していましたが、そもそも、イノベーションを実現するためのプロセスの解像度が甘く、理解できていなかったのかを痛感しました。

これまで、道なき場所を何とか進むような方法を描き、実現させられることが、何度かはありました。しかし、その方法はあまりに属人的であり、負荷も高く、再現性の低さが課題でした。

人や組織が持続的にイノベーションを起こし続けるためには、これほどまでに本質から枝葉末節までを理解しなければならないのか。


我流でも、何かを変えたり、起こすことは出来なくも無いけれど、これらの重要チェック項目を自然に扱えるようになれば、その達成基準や再現性が上がるようになるもの間違いなく。まずは、型を使えるようにしないと。

今の自分には足りない、でも、きっと大きな武器になるもの。

かの宮本武蔵でさえ「千日の稽古をもって鍛となし、万日の稽古をもって錬となす」と言っていると鑑みると、積み重ねていくしかないんだろうなあ。


【本の抜粋】
わたしたちが経営者を教育し、経営者を教育し、経営研究を行う方法を導くパラダイムに欠陥があるのではないかということだ。すなわち、意思決定はデータをしっかり分析したうえで下されなくてはならない、という信念である。このパラダイムの何がいけないかといえば、経営者が前例のないことをやろうとしたときや、未来が過去と大きく変化するときには成り立たなくなることだ。手に入るデータといえば、過去に関するものだけだから。

イノベーションの理論を用いて業界の変化を分析する方法の第一段階は、変化のシグナル、つまり何者かが変化の機会を有利に利用しようとしている兆候を探すことだ。

より興味深いシナリオが生じるのは「非対称性」、つまり動機づけやスキルにおいて企業間に重要な違いが存在するときだ。動機づけが非対称な状態とは、ある企業が別の企業のやりたがらないことをやろうとする状態をいう。スキルの非対称性が生じるのは、ある企業の強みが、別の起業の弱みである場合だ。

本書の重要な教訓は、当然ながらイノベーションと関係がある。特に重要な教訓を四つ挙げよう。
一 破壊とはプロセスであって、一過性の出来事ではない。
二 破壊とは相対的な現象である。ある企業にとって破壊的なイノベーションが、別の企業にとっては持続的なイノベーションになるかもしれない。
三 異質な技術や急進的な技術が破壊的イノベーションとは限らない。
四 破壊的イノベーションは、ハイテク市場だけのものではない。破壊はどんな製品・サービスにも起こるし、国家経済間の説明することもできる。

言うまでもないことだが、イノベーションの旅はここで終わらない。理論の構築と活用は反復的なプロセスである。

未来とは常に予測不可能なものだ。唯一絶対確実に予測できるのは、「予測もしなかったことが起こる」ということだけだ。わたしたちが求めるのは完璧な理論ではないし、第一そんな理論はあり得ない。わたしたちの目標は、予測不能な動向を読み解く能力を高めることにある。

理論とは、「何が、何を、なぜ起こすのか」という、条件つきの言明である。

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