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週末読書メモ121. 『三体III 死神永生』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

何億年もの超マクロ、今この一瞬の超ミクロ。2つの時間軸の尊さが心に残る名作。


過去2週に渡り取り上げてきた現代SF最高峰『三体』シリーズ。

ついに最終章となる『三体III 死神永生』。

これは…感想を述べることすら憚られるほどの傑作です。その上で、あえて語るとしたら、超マクロと超ミクロでの時間軸の2つに関してです。


あれは…千八百九十万三千七百二十九年と六世紀前ことになる。六世紀など、地質時代の長さにくらべれば誤差の範囲だ。
(中略)いまようやくわかった。自分など、風の前の塵、大河を漂う草の葉でしかない。程心はいさぎよくあきらめ、風が自分の中で吹き抜け、陽光が魂を貫くにまかせた。

超マクロでの時間軸という点においては、この引用部分からも見てわかる通り、第2部『黒暗森林』以降、時間軸が加速・飛躍していきます。

それがこの物語の面白さの一因であるとともに、故に世界は目まぐるしく変わっていきます。

多数の魅力的な登場人物たちが織りなす人間ドラマ。しかし、それも、時間という圧倒的な力によって、登場人物達も移り変わり。

トルストイの『戦争の平和』でも描かれていたように、数多の人々の生き様によって、歴史が形作られていくこと。

それが、宇宙全体、何百年/何千年単位であっても、万物流転しながら、世界・歴史が動いていく様は何と表現したらよいものか…


同様に、超ミクロでの時間軸に関して。

上記の通り、『三体』の物語は、圧倒的な範囲のスケールに広がります。

(それは、下の動画にもあるレベルで、1つの組織から始まり、地球全体、太陽系全体、はては宇宙全体にまで)

しかし一方で、筆者が度々強調するのは、今この一瞬の大切さ。

「おまえたちがここに来たのは、きっと重要な任務のために違いない。だが、焦るな。どのみち終末は避けられない。だから、いまを楽しめ」

「そんなことはどうでもいい。”きょうを楽しめ”というのがいつだって正しい道だったんだからね。もちろん、楽しむべき”きょう”はもうたいして残っていないが、だからといってわざわざ悩みを探す必要はない。さあ、行こう。」

『三体』で人類が対峙する存在は、如何ともし難い力の差があります。

けれども、抗うこと・生きることを、決して諦める必要はない(諦めるべきではない)と!


古典SFの名作『幼年期の終り』でも同様のことが語られていました。

しかしカレルレンは知っていた ーー 彼らは最後まで諦めることはない。どんな運命が彼らのものであろうと、決して絶望的になったりはせずに待つだろうということを。彼らはこれからもオーバーマインドへの奉仕をつづけるだろう。なぜなら、ほかに道はないからだ。だが、その奉仕のうちに、おのれの魂までも失うことは決してないのだ。

『幼年期の終り』

この大きな宇宙の、この長い歴史の中で、人間は大河の一滴でしかありません(『三体』での世界観で考えると、一滴ですらないのかも)。

だからと言って、「おのれの魂までも失うこと決してない」と。


非常に面白かった第1部『三体』。とんでもなく面白かった『三体Ⅱ 黒暗森林』。その上で、言葉を失うほどの第3部『三体III 死神永生』。

第1部では「そこまで騒がれるほどでは…」と思いつつ、第2部で完全に心を掴まれ、そして、第3部では心を持っていかれました笑

こんな物語に出会えたこと幸せを噛み締めつつ、この本を糧にして、これからも前に進んでいきたいです。


【本の抜粋】
生命が海から陸に上がったのは、地球上の生物が進化するうえでのマイルストーンでした。しかし、陸に上がった魚は、もはや魚ではありません。同様に、実際に宇宙に出た人間は、もはや人間ではないのです。
(中略)地球を捨てて宇宙に出て行こうと思っているなら、どうかよく考えてみてください。払うべき代償は、想像をはるかに超えているでしょう。

「生きているだけですでに、ものすごく幸運なのよ。これまでの地球がそうだった。いま、この残酷な宇宙では、昔からずっと、生きているだけで幸運だったの。でも、いつからか、人類は幻想を抱くようになった。自分たちには生きる資格があり、生きていることは空気のように当たり前のものなんだという幻想をね」

「おまえたちがここに来たのは、きっと重要な任務のために違いない。だが、焦るな。どのみち終末は避けられない。だから、いまを楽しめ」

「死とは、永遠に点灯している唯一の灯台なんだと。つまり、人間、どこへ航海しようと、結局いつかは、この灯台が示す方角に向かうことになる。すべてが移ろいゆくこの世の中で、死だけが永遠だ」

「そんなことはどうでもいい。”きょうを楽しめ”というのがいつだって正しい道だったんだからね。もちろん、楽しむべき”きょう”はもうたいして残っていないが、だからといってわざわざ悩みを探す必要はない。さあ、行こう。」

あれは…千八百九十万三千七百二十九年と六世紀前ことになる。六世紀など、地質時代の長さにくらべれば誤差の範囲だ。
(中略)いまようやくわかった。自分など、風の前の塵、大河を漂う草の葉でしかない。程心はいさぎよくあきらめ、風が自分の中で吹き抜け、陽光が魂を貫くにまかせた。

すべての記憶がいま智子のまなざしに集約されていた。悲哀、敬服、驚嘆、非難、哀惜…さまざまな感情が複雑にからみ合っていた。
「あなたはいまもまだ、責任のために生きているんですね」と智子が言った。

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