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週末読書メモ137. 『世界の十大小説』
(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)
骨太の文学評論。文豪たちの天才性も覗ける1冊。
自らも小説家であるサマセット・モーム。
幾多の物語に触れてきた彼が、世界(欧米を中心)の10大小説と選んだ作品を、作家の生涯・人物像から語り、中身を解説した1冊になります。
どの章でも、私はそこで扱う作家について、その生涯と人物のことを少しばかり述べておいた。そのようなことをしたのは、一つには私自身の楽しみからであるが、また読者の為を思ったからでもある。というのは、ある作家が果してどのような人物でったかを知っていたほうが、その作家の作品を一層よく理解し味わうことができると、私は考えるからである。
彼が10大小説として挙げた作品は以下の通り。
トム・ジョーンズ/ヘンリー・フィールディング
高慢と偏見/ジェイン・オースティン
赤と黒/スタンダール
ゴリオ爺さん/オノレ・ド・バルザック
デイヴィッド・コパフィールド/チャールズ・ディッケンズ
ボヴァリー夫人/ギュスターヴ・フロベール
白鯨/ハーマン・メルヴィル
嵐が丘/エミリー・ブロンテ
カラマーゾフの兄弟/フョードル・ドストエフスキー
戦争と平和/レフ・トルストイ
すぐれた小説というものは、はたしてどのような特質をそなえねばならないか、私の考えをあえて述べておくとしよう。まず第一に、主題は広範囲にわたって興味を起こすものでなければならない。
(中略)それから作者が物語る話は、首尾一貫していて説得力を持つものでなけれならない。
(中略)それから作中人物の物の言い方は、ちょうど行動がそうであるように、その人物の性格に由来するものでなけれならない。
まあ、どれも名作であることに異論はなく。また、『世界十大小説』を読んだあと、上記10作品を手に取りたくなる気持ちが溢れてきます。
(その上で、『戦争と平和』のべた褒め具合)
『戦争と平和』は、たしかにあらゆる小説の中でもっとも偉大な作品である。このような小説は、高度の知性と力強い想像力とに恵まれた人、この世の中についての豊かな経験と人間性を見抜く鋭い洞察力とを持った人でもなければ、とうてい書けるものではない。
10大小説の作品・作家は、それぞれ特質が異なる上で、文豪たちの能力で際立つのは、物語の創造力に加え、人間に対する理解・洞察力です。
彼は、獄中生活をしているあいだに、人間というものが、殺人、強姦、強盗など、恐ろしい罪を犯すことはあっても、同時に、勇気、寛大、同胞愛といった美質を持ち得るものであることを知った。彼は慈悲心に富んでいた。
(中略)ドストエフスキーを世界をもっともすぐれた小説家の一人にしているあの驚くべき独創性は、彼の中にある善ではなく、悪から生まれ出ているのである。
特にそれが際立っているドストエフスキーは、こう述べられています。
「まじり気一つない完全に善良な人間がいようとは信じられない。人間は善と悪がまじり合って出来ているものだと思う」とフィールディングで解説されていましたが、真にリアリストであるには、このことを深く理解していることが不可欠だと。
10名の文豪であり異才が取り上げられている本作。
興味深いのは、全員がそれぞれ全く異なる性格の持ち主であること笑
天才とは、ある画一的なパターンにはまるものではないことも、改めて感じさせられます。筆者なりに、重要な作品を生み出す要素を考察した結果が以下となります。
ところで、一人の作家が重要な作品を生み出すことを可能にするには、いま言った創作本能に、一体何が結びつかねばならないのであろうか。さよう、それは個性であると私は思う。
(中略)これらの作家が、一体どこからその類まれな才能を手に入れたのか、その辺のところは誰にも分らない。どうやらすべてはその人の個性いかんによってきまるらしいが、その個性というのが、わずかな例外はあるにしても、尊重すべき美質と下劣な欠点とから成り立っているらしいのである。
個性だと。
ドラッカーも己の強みに集中せよということを話しています。どんな分野であっても、最後は自分が何で勝てるのか、卓越できるのか。
改めて、そんなことも印象的な1冊でした。
【本の抜粋】
すぐれた小説というものは、はたしてどのような特質をそなえねばならないか、私の考えをあえて述べておくとしよう。まず第一に、主題は広範囲にわたって興味を起こすものでなければならない。
(中略)それから作者が物語る話は、首尾一貫していて説得力を持つものでなけれならない。
(中略)それから作中人物の物の言い方は、ちょうど行動がそうであるように、その人物の性格に由来するものでなけれならない。
どの章でも、私はそこで扱う作家について、その生涯と人物のことを少しばかり述べておいた。そのようなことをしたのは、一つには私自身の楽しみからであるが、また読者の為を思ったからでもある。というのは、ある作家が果してどのような人物でったかを知っていたほうが、その作家の作品を一層よく理解し味わうことができると、私は考えるからである。
まじり気一つない完全に善良な人間がいようとは信じられない。人間は善と悪がまじり合って出来ているものだと思う。人間性のさまざまな特質のうち、因襲的な道徳観が非とするものであっても、人間らしい、自然な従って大目に見るのが適当だと考えられるものに対しては寛大な態度をとる。
彼は、獄中生活をしているあいだに、人間というものが、殺人、強姦、強盗など、恐ろしい罪を犯すことはあっても、同時に、勇気、寛大、同胞愛といった美質を持ち得るものであることを知った。彼は慈悲心に富んでいた。
(中略)ドストエフスキーを世界をもっともすぐれた小説家の一人にしているあの驚くべき独創性は、彼の中にある善ではなく、悪から生まれ出ているのである。
『戦争と平和』は、たしかにあらゆる小説の中でもっとも偉大な作品である。このような小説は、高度の知性と力強い想像力とに恵まれた人、この世の中についての豊かな経験と人間性を見抜く鋭い洞察力とを持った人でもなければ、とうてい書けるものではない。
ところで、一人の作家が重要な作品を生み出すことを可能にするには、いま言った創作本能に、一体何が結びつかねばならないのであろうか。さよう、それは個性であると私は思う。
(中略)これらの作家が、一体どこからその類まれな才能を手に入れたのか、その辺のところは誰にも分らない。どうやらすべてはその人の個性いかんによってきまるらしいが、その個性というのが、わずかな例外はあるにしても、尊重すべき美質と下劣な欠点とから成り立っているらしいのである。
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